2020年4月28日、ASUSはTinkerシリーズの新モデル「Tinker Edge R」を発表いたしました。
スペック
モデル名 | Tinker Edge R |
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メーカー | ASUS |
発売日 | 2020/05 |
価格 | |
価格(日本円) | |
CPU | Rockchip RK3399 Pro(6コア) (1.8GHz A72 x2 + 1.4GHz A53 x4) |
GPU | Mali-T860 MP4(800MHz) |
NPU | 3.0TOPS |
メモリー | 4GB LPDDR4 2GB LPDDR3(NPU) |
サポートOS | Debian 9 Android 8.1 |
有線LAN | 1GBE x 1 |
Wi-fi | 802.11ac |
Bluetooth | 5 |
チップ | RTL8211F-CG |
ストレージ | 16GB eMMC microSD |
USB | 3.2(Gen1) x 3 3.2(Gen1) x 1(TypeC) |
GPIO | 40pin x 1 |
映像 | HDMI x 1 MIPI DSI x 1 |
カメラ | MIPI-CSI x 1 MIPI-CSI/DSI x 1 |
オーディオジャック | ○ |
その他インターフェース | miniPCIe |
消費電力 | |
電源 | DC 12V〜19V |
幅 | 100mm |
奥行き | 72mm |
高さ | |
その他 |
特徴
「Tinker Edge R」は2019年11月の「ET & IoT Technology 2019」への出展発表で予告されたSBC(シングルボードコンピューター)で、SoCにRockchip RK3399Proを搭載しています。
参考:組込み総合技術展&IoT総合技術展「ET & IoT Technology 2019」に出展することを発表:ASUS
RK3399Proはがじぇっとりっぷでも何度か取り上げていて、一言でいうとRK3399に3.0TOPSのNPUが追加され、NPUとの接続に使われるのでUSB3.0が1ポート少ないSoCとなります。
NPU(ニューラル プロセッシング ユニット)はCPUとは根本的に異なっていて機械学習の要となる行列計算に特化しています。
▲上の画像はASUSが公開しているベンチマーク結果です(グラフの短い方が早い)
細かいスペックは不明ですが、デスクトップ機(Xeon)より早いことが分かります。
MobileNetとはなんぞやというと、調べてもこれという回答が見つからなかったのですが、畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network、CNN)に関するアルゴリズムの一つのようです。
機械学習は”学習”と”推論”の二つのプロセスからなります。
分かりやすく言うと、大量の犬の画像から、犬の特徴はこういうものであるという特徴データを抽出する過程が”学習”で、この特徴データをもとに、画像に映っているものが犬かどうかを判定するのが”推論”です。
今のスマホでカメラアプリが料理とかスナップ写真だとかのシーン判定をするのは大体この”推論”によるものですね。
で、なんとなくわかると思いますが、大量の画像から特徴を抽出するというのは膨大な計算処理が必要で、画像処理分野においては畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network、CNN)という手法が主流です。
MobileNetはこのCNNで使われるアルゴリズム(モデル)の一つで、2017年にGoogleが論文を発表しました(原著は下記)。現在はv3まで発表されています。
名前のとおり、モバイル端末でも処理できるくらいに軽く、かつ高い精度を持っています。
v1:Howard, Andrew G., et al. “Mobilenets: Efficient convolutional neural networks for mobile vision applications.” arXiv preprint arXiv:1704.04861 (2017).
v2:Sandler, Mark, et al. “Mobilenetv2: Inverted residuals and linear bottlenecks.” Proceedings of the IEEE Conference on Computer Vision and Pattern Recognition. 2018.
v3:Howard, Andrew, et al. “Searching for mobilenetv3.” arXiv preprint arXiv:1905.02244 (2019).
論文はかなり専門的な話なのでそのままだと専門外の人は理解しづらいです。
なるべくかみ砕いていうと、空間方向とチャネル方向に分解して順に計算を行うことで、計算量を減らすというものです。
例えとして適切なのか自信がありませんが、画像データの縦横が空間方向、各ピクセルのRGBがチャネル方向で、RGBまとめてだとピクセルごとに16の6乗(000000~FFFFFF)からの解析になるけど、RGBのレイヤーに分けると16の2乗(00~FF)からの解析で、それをRGBの3回重ねればいい、みたいな感じでしょうか。
なお、SSDはソリッドステートドライブではなく、Single-Shot multi-box Detector(画像中の物体を単一のニューラルネットワークを使用して検出する手法)の略字です。
話を戻して、「Tinker Edge R」のメモリは、システム用が4GB LPDDR4、NPU用が2GB LPDDR3となっています。
システム用とNPU用で規格が違うのは初めてですね。
ストレージは16GB eMMCとmicroSDです。
▲インターフェースはひとつの辺に固まっているので、クラスターを組んだりするのがしやすくなっています。
USBはNPU用にUSB3.0が一つ使われているのですが、ハブチップを介しているのか、Type-A×3+Type-C×1(全ポートUSB 3.2 Gen1)となっています。
電源は電源ジャックの他、ピンヘッダ入力にも対応しており、最大65Wまでの電力供給に耐えられ、接続機器への給電も賄えるとのこと。入力対応電圧は12~19Vで、電源保護回路も備えられています。
▲上から見たところです。
MIPI端子(CSI×1、DSI×1、CSI/DSI×1)がうまくファンを避けるように配置されています。画像処理に強いNPUを搭載しているのだから、画像入力となるカメラインターフェースは搭載して当然といわんばかりです。
左はWi-fi用のM.2スロットで、画像から判断するにAzurewave AW-CB375NFが搭載されるようです。このWi-fiボードはMSIのゲーミングノート「Alpha 15」にも使われています。
M.2スロットなので、SBCながら802.11ax(Wi-fi 6)対応に変更できそうなところがかなり気になります。
▲裏面には4G/LTE用のminiPCIeスロットの他、microSDスロット、nanoSIMスロットがあります。
スタンドアロン動作を考えればこれでもいいのですが、100mmという幅を生かしてM.2 2280スロットでもよかったかもと思わなくもないですね。
サイズは100×72mmのPico-ITXサイズで、がじぇっとりっぷの所有する「NanoPC-T4」(100×64mm)より奥行きがちょっと深くなっています。
まとめ
「Tinker Edge R」は使い勝手がよさそうというか、かなり完成度が高いです。
USBは4ポートあるし、Wi-fiは換装できるしと、SBCにおいて「こうだったらいいのに」と思うところがクリアされています。
すでに一部では評価機が配られているみたいですね。
価格についてのアナウンスはまだありませんが、これまでの価格傾向的に同じSoCを採用した他社製品より少し高い価格をつけているので、150~200ドルくらいになるんじゃないかと予想しています。
国内発売も未アナウンスではありますが、これまでの「Tinker」シリーズは発売されているので、「Tinker Edge R」も発売されるでしょう。
関連リンク
Tinker Edge R:ASUS
ASUS Announces Tinker Edge R:ニュースリリース
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