2020年3月20日、SBCメーカーのFireflyは、Rockchip社のRK3399Proを搭載した「AIO-3399ProC」を発売いたしました。
スペック
モデル名 | AIO-3399ProC |
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メーカー | Firefly |
発売日 | 2020/03 |
価格 | 199ドル(3GB) 259ドル(6GB) |
価格(日本円) | |
CPU | Rockchip RK3399 Pro(6コア) (1.8GHz A72 x2 + 1.4GHz A53 x4) |
GPU | Mali-T860 |
NPU | 3.0TOPS |
メモリー | 3GB/6GB LPDDR3 |
サポートOS | Ubuntu 18.04 Android 9.0 |
有線LAN | 1GbE x 1 |
Wi-fi | |
Bluetooth | |
チップ | |
ストレージ | microSD |
USB | 3.0 x 1 3.0 x 1(Type-C) 2.0 x 3 |
GPIO | × |
映像 | HDMI(2.0 4K/60Hz) MIPI-DSI eDP 1.3 |
カメラ | MIPI CSI x 2 |
オーディオジャック | ○ |
その他インターフェース | miniPCIe RS232 RS485 PoE UART microSIMスロット |
消費電力 | |
電源 | DC 12V |
幅 | 138mm |
奥行き | 91.3mm |
高さ | |
その他 |
特徴
「AIO-3399ProC」は搭載機種の少ないRK3399Proを搭載しています。
がじぇっとりっぷで紹介したことがあるのも「Edge-1S」「Toybrick RK3399Pro」「ROCK Pi N10」の3機種のみで、「AIO-3399ProC」は4機種目となります(「Edge-1S」は未発売)。
RK3399Proは簡単に言うと、RK3399に機械学習向けのNPU(Neural network Processing Unit)を追加したものです。
機械学習は一番多く使われているのが画像処理や画像判定で、例えばスマホカメラでの料理撮影モードやポートレートモードなどの自動切り替えも機械学習による画像認識の成果といえます。
がじぇっとりっぷではこのテーマとなるたびに書いていますが、機械学習は大きく「トレーニング」と「推論」の二つに分かれます。これは「経験の積み重ね」と「経験に基づいた判断」と言い換えた方が分かりやすいでしょうか。
なんとなく想像できると思いますが、「トレーニング」には膨大なデータと処理が必要なので、一般的にはスマホの場合だと処理済みの「経験データ」を元に推論(画像処理や画像判定)のみを行っています。
この機械学習、今のトレンドは行列計算(ベクトル計算)を元にしていて、CPUでもできなくはないですが、それほど得意ではありません。
そのため、行列計算に特化したプロセッサーとして登場したのがNPUとなります。
CPUの処理能力がFLOPS、NPUの処理能力がTOPSと単位すら異なっていることからも、方向性が全く違うというのは理解できると思います。
▲RK3399Proに搭載されたNPU(画像真ん中付近)は1920個の800MHz動作な積和ユニット(Multiply-Accumulate:MAC)アレイで構成され、処理性能は3.0TOPSです。以前は2.4TOPSとなっていたのに、いつの間に増えたんだろうか…
対応するフレームワークは「TensorFlow」「CoffeeCaffe」「MXNet」です。
2020年4月24日修正:「Caffe」を「Coffee」と書いてました…恥ずかしい… orz
参考:RK3399Pro:Rockchip
「AIO-3399ProC」のメモリは3GB(CPU:2GB、NPU:1GB)または6GB(CPU:4GB、NPU:2GB)です。ストレージは16GBです。
▲ブロックダイアグラム図を見ると、NPUは内部的にはUSB3.0とUSB2.0を1ポートずつ使って接続され、NPU自身がメモリバスを持ち、直接メモリとやり取りできるようになっていることが分かります。
仕様上はNPUの専有メモリは1~2GBとなっていますが、32bit dataとあるので理論上の上限は4GBとなるようです。実際「ROCK Pi N10」では8GB(CPU:4GB、NPU:4GB)という仕様のものもあります。
▲フロント(?)の端子類です。
有線LAN、HDMI、USBなどが並んでいます。右端の12V電源は後ろにピン入力も用意されています。
左から2番目は上がmicroSD、下がmicroSIMなのですが、こうも近いと間違えそうです。
▲インターフェースは他のSBCよりも豊富というか、非常に柔軟性が高くなっています。
ちょっと面白いのがPoE(Power over Ethernet)にも対応している点で、使い方によってはLANケーブル1本で稼働させることも可能となっています。
ワイヤレスで行きたいのならmicroSIMスロットとminiPCIe(3G/4Gカード用)を使えば、電源さえ確保すればスタンドアロンで稼働させることもできます。
右にWi-fiチップらしきものと右端にアンテナ端子っぽいものが見えますが、スペック表にも記載がありません。なんでだ…
ボード上には実用機というよりも開発向けに近いかなというくらいにピンの種類が多く、特に映像系は多いです。HDMI、eDPに加え、LVDSとMIPI-DSIもあります。映像入力(カメラインターフェース)はMIPI-CSIで、13MP×1または8MP×2に対応しています。
▲デュアルカメラにすると人間の目のようになり、奥行きを判断したり、ものを立体的に見たりと医いたことが可能になります。
Microsoftの「Kinect」やIntelの「RealSense」のようなことができると思えばだいたい合っています。
一方でSBCには必ずと言っていいほど付いている40pin GPIOはありません。
▲製品ページに掲載された用途例ですが、”AI Server”を除いて人の顔を見る、あるいはものを見るという使い方が想定されているようで、開発用ではなく組み込み向けに作られていることが分かります。
AIと画像を活用した用途がメインなので、センサー系のGPIOが省かれている、と考えられます。
▲パッケージはシンプルです。
…いや、やっぱりWi-fiありますよね?一本ってことは802.11b/g/n(Wi-fi 4)あたりでしょうか。
▲また、インターフェースの並びはProではない「AIO-3399C」と共通になっており、ケース類が流用できます。
ケース付きは「EC-A3399ProC」というモデル名になっていますが、3GBメモリモデルしかありません。
▲「AIO-3399C」にはディスプレイ付きケースもありますが、なぜか「AIO-3399ProC」には用意されていません。今後の需要を見ての判断、ということでしょうか?
まとめ
「AIO-3399ProC」の価格は3GBメモリで199ドル(約21,400円)、6GBメモリで259ドル(約27,800円)と、SBCにしては高価な部類に入ります。
メタルケースとのセットは3GBモデルのみ用意され、225ドル(約24,200円)です。
そのほか、USBメモリやらヒートシンクやらがセットになった「Basic Package」と、カメラやらディスプレイまで含まれた「Luxury Package」が用意されています。
「ROCK Pi N10」ほどには安くはありませんが、PoE対応やらシリアルポート、microSIMスロットなど、追加された要素を考えると、このくらいになるのでしょう。
個人で遊ぶのであれば「ROCK Pi N10」でもいいと思いますが、実際に組み込みで使うのなら「AIO-3399ProC」といったところでしょうか。
関連リンク
AIO-3399ProC:Firefly
EC-A3399ProC:Firefly
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