2020年4月28日、NASメーカーのQNAP(本社:台湾)は、4コアのAlpine AL-214を搭載した1ベイ/2ベイ/4ベイNAS「TS-131K」「TS-231K」「TS-431K」を発表し、5月25日には国内発表、同時に国内発売を開始いたしました。
「TS-x31K」(3機種をまとめてこう書きます)は「TS-131K」のLANポートが一つであること、電源アダプタの容量やファンのサイズが違うこと以外、CPUや機能はほぼ同じです。
がじぇっとりっぷはデータの保全性などの観点から1ベイNASは扱わない方針なので、この記事では「TS-231K」「TS-431K」を中心に記述していきます。
スペック
型番 | TS-231K | TS-431K |
---|---|---|
メーカー | QNAP | |
価格 | 30,540円 | 43,065円 |
発売日 | 2020/05 | |
幅 | 102 | 160 |
高さ | 161 | 161 |
奥行き | 219 | 219 |
CPU | Alpine AL-214 1.7GHz Quad-Core | |
内部フラッシュメモリ | 512MB | |
メモリ | 1GB DDR3 | |
最大メモリ | × | |
ホットスワップ | ○ | |
SSD対応 | ○ | |
NIC (1GbE) | 2 | |
NIC (10GbE) | – | |
LA/PT | ○ | |
USB2.0 | – | |
USB3.0 | 3 | |
USB type-c | – | |
eSATA | – | |
PCIe | – | |
SDカード | – | |
HDMI | – | |
4K対応 | – | |
DisplayPort | – | |
S/PDIF | – | |
オーディオジャック | – | |
スピーカー | – | |
赤外線 レシーバー | – | |
ハードウェア 暗号化 | ○ | |
ハードウェア アクセラレーション | × | |
IPカメラ (無償) | 2 | |
IPカメラ (最大) | 25 | |
仮想化 (VMWare) | × | |
仮想化 (Windows) | × | |
仮想化 (Citrix) | × | |
仮想化 (OpenStack) | × | |
仮想マシン (VirtualBox) | × | |
仮想マシン (Docker) | ○ | |
対応RAID | 0/1 | 0/1/5/6/10 |
ファイルシステム | EXT4 | |
システム ファン | 70mm x 1 | 120mm x 1 |
ノイズレベル | 19.2dB | 21.3dB |
Wi-fi | USBアダプタ | |
消費電力 | 15.6W | 26.57W |
重さ | 1.35kg | 3kg |
DTCP+ | ||
DTCP-IP | ||
DLNA | ○ | |
iSCSIターゲット | ○ | |
iSCSI LUN | ○ | |
ユーザー数 | 4096 | 4096 |
グループ数 | 512 | 512 |
並列接続数 | 400 | 400 |
共有フォルダ | 512 | 512 |
スナップショット | 32 | 32 |
read性能 | 219 | 223 |
write性能 | 222 | 212 |
read性能 (暗号化) | 217 | 217 |
write性能 (暗号化) | 221 | 158 |
備考 |
特徴
「TS-x31K」はスペックから察するに、2016年末に発売された「TS-x31P」の後継機にあたる機種となります。
「TS-x31P」ではCortex-A15アーキテクチャで2コアのAlpine AL-212(1.7GHz)でしたが、「TS-x31K」では4コアのAlpine AL-214(1.7GHz)と、コア数が2倍に増えています。
それ以外のメモリや機能などは、比較する限りでは同じですし、画像を見比べても筐体自体はほぼ同じものの色違いのように見えます。
Alpine AL-214(とAlpine AL-212)は、2015年1月にAmazonに約3.5億ドルで買収されたイスラエルの半導体企業Annapurna Labsが、2016年1月に発表したプロセッサです。
そもそもAmazonが半導体企業を買収した目的は自社のクラウドサービスであるAWSのサーバー用CPUを開発するためで(Amazonは世界最大のクラウドサービス企業でもあります)、2018年にはAWSサーバー用プロセッサの「AWS Graviton」を、2019には「AWS Graviton2」およびAIチップの「AWS Inferentia」を発表しています。
Annapurna Labsはもともと低電力コンピューティングサーバーとストレージサーバー向けプロセッサの開発を行っていた企業なので、「Alpine」シリーズはおそらく買収前から開発されていたもので(そもそもCPUの開発が1年で済むとは思えませんし)、そこにクラウドサービスとの容易な接続性を追加して発表したのではないかと思っています。
なお、「Fire HD」や「Echo」シリーズでは「Alpine」シリーズは使っていないようですが、Annapurna Labsの開発方針だとタブレットやIoTはターゲットになっていませんし、自社製品ならソフトウェアで何とでもなるからということなのでしょう。
話を「TS-x31K」に戻すと、メモリはオンボード1GB DDR3で、増設は不可、「TS-x31K」以外はLANポートが2つあるものの、HDMIやオーディオ出力などもなく、QNAPのハイエンド系NASでは標準となりつつあるPCIeスロットもなしと、ミドル下位くらいの構成です。
▲CPUが強化されたことで、「TS-231K」ではデータ書き込み時の速度低下が起こらなくなりました。
▲「TS-231P」と比較すると、スループットが向上していることが分かります。
なお、「TS-431K」ではRAID5でのスループットのため、書き込みが少し遅くなっています。
▲QNAPでは現在1GbEを超える2.5GbEや5GbEを推しているそうで、USB接続の5GbEアダプタ「QNA-UC5G1T」での転送速度も掲載されています。
1GbE×2よりは早くなってはいますが、「QNA-UC5G1T」のポテンシャル(430M/s前後)からするといまいち速度が出ていません。
セキュリティ面ではAES 256ビットボリュームベースの暗号化には対応していますが、フォルダー単位での暗号化には対応していません。
最近ではエントリークラスでも対応を始めたスナップショット機能は、最大32までの対応となります。
先に書いたようにクラウドサービスとの親和性が高いので、HBS(Hybrid Backup Sync)機能を使うことでクラウドストレージにバックアップすることもできます。
QNAPアプリではメモリの少なさからLinux Station(LXCベースでNAS上でLinuxを動かす)、Virtualization Station(KVMベースでNASを仮想化基盤にする)は使えませんが、Container Station(dockerベース)は使えます。
前述のようにメモリが少ないので、無理に複数のアプリを動かさず、ストレージとしての役割に専念させた方が無難でしょう。
やるとすればメディアサーバーくらいでしょうか。
筐体
▲フロントは電源ボタン、ワンタッチコピーボタン、USB3.0が1ポートとなっています。
▲こちらは前世代の「TS-231P/TS-431P」です。
カラーリング以外はほぼ同じで、違いはHDDトレーのロック機構の有無くらいでしょうか。
▲背面はシンプルにLANポートとUSBのみです。
まとめ
「TS-x31K」の価格は、税込みで以下のようになっています。
TS-131K:約24,300円
TS-231K:約30,600円
TS-431K:約43,000円
この価格は絶妙というか微妙なラインで、4ベイで比較すると前世代の「TS-431P」は約33,300円と1万円安く、同じ家庭向けミドルクラスながら一つ上になる「TS-431P2」は約52,000円となっています。
特に「TS-431P2」は搭載するCPUは4コアのAlpine AL-314で性能的にあまり差はないのですが、メモリスロットを搭載しており、最大8GBまでメモリを増設することができます。
もうひとつ上だとPCIeスロットを持った中小企業向けミドルクラスの「TS-453Be」が約55,500円で控えています。
2ベイではIntel Celeron J4005にPCIeスロットを搭載した「TS-251D」が約36,500円と結構近い価格帯にありますし、下位クラスの「TS-230」はLANポートはひとつながらメモリを2GB搭載して22,000円を切っています。
一気にラインナップが拡充されたのはいいことですが、帯に短し襷に長しというか、なかなかに住み分けが難しくなっている印象です。
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