がじぇっとりっぷではずいぶん前に、ASUS「Mini PC PN60」の記事を書いています。
国内販売モデルはCore i3-8130Uにメモリ・ストレージ・OSの揃った完成品だったのですが、2020年5月15日、Core i5とCore i7のベアボーンモデルの国内発売がアナウンスされ、2020年6月5日に発売となりました。
そこでCore i7モデルをお借りすることができましたので、レビューしていきたいと思います。快く試用機を提供くださったASUS様にはこの場にて御礼申し上げます。
ASUS PN60-BB7088MH
CPU | Core i7-8550U |
---|---|
メモリ | DDR4 SO-DIMM×2 |
ストレージ | M.2 NVMe(2280)×1 2.5インチ×1 |
wi-fi | 802.11ac+BT4.2 |
サイズ | 115×115×49mm |
重さ | 0.7kg |
GoodPoint
✔ とにかく小さい!
✔ デュアルストレージが可能
✔ ハイパフォーマンスチューニング
BadPoint
✖ 冷却面で不安
✖ ファンが結構うるさい
外観
▲パッケージは結構いろいろ入っていまして、本体と電源のほか、VESAマウンタ、ネジ類にドライバCD(ベアボーンならではですね!)、マニュアル・保証書の類と、盛りだくさんです。
▲本体のサイズは115mm四方です。
なんと、iPhone 4の高さとほぼ同じです。
比較用にちょうどいいかなと置いてみたらぴったりでびっくりしました。
▲インターフェースです。
前面はUSBが3ポート、背面にも3ポートあるので拡張性は比較的確保されています。
前面のType-C端子は稲妻マークがあるので、PowerShare(電源オフ時も給電できる機能)に対応しています。
オプションのconfigurable portにはHDMIが設定されていました。
背面のUSB Type-CはALTモードでのDisplayPort出力に対応していますが、configurable portとの排他利用になるのでトリプルディスプレイができず、デュアルディスプレイまでとなります。
▲電源アダプタは本体の1/4くらいのサイズです。
電源アダプタがでかいのではなく、本体がちっちゃいんです。
▲USBのポータブルCDドライブの方が大きかったりします。
ちなみにCDの直径は120mmなので、「PN60」の上に載せたらはみ出します。
▲セッティングしたらこんな感じになりました。
デスクトップの上においても全然邪魔になりません。
セッティング
「PN60」はベアボーンなので、自分でストレージとメモリとOSを用意し、組み込んでいく必要があります。
▲底面は大きくスリットが開いています。
四隅のネジを外すことで、開けることができます。
▲ふたを開けたところです。
存外にネジが長くてびっくりしました。
Wi-fiは換装可能ですが、今回はこのままで進めます。
▲メモリスロットは2段になっています。
▲M.2スロットとSATA端子です。
リボンケーブルで接続されている、M.2スロットの上の小さなボードがConfigurable Port用のボードです。
以前の記事では10GbEが搭載できればと書きましたが、見るからに無理そうですね。
▲ふた側には2.5インチ用のマウンタが付いています。
ふたを閉めたらSATA端子に挿入されるスタイルです。
▲メモリとストレージを装着したところです。
以下のものを使用しています。
なお、M.2 SSD用の背の高いヒートシンクは2.5インチストレージと干渉する可能性があります。
「M2PeG」のヒートシンクで、2.5インチとの隙間は3~4mm程度でした。
システム
手持ちに余ったライセンスがなかったので、OSはWindows 10 Enterprise(試用版)を利用しています。
無料で90日まで使え、試用期間も2回まで延長可能なので、こういう時には便利です。
もともとのシステムが入っていないので、今回はいつもの「Macrium Refrect Free」の出番はありません。
▲BIOS(UEFI)画面はグラフィカルですが、旧スタイルを踏襲した形になっています。
なじみやすいと言えばなじみやすいのですが、同じASUSのゲーミングノート「FX504GD」のような近未来感のあるグラフィックを期待していただけに、ちょっとがっかりでした。
▲システム情報はこんな風になっています。
▲CPU-Zの表示内容です。
▲CDからのドライバセットアップ画面です。
▲インストール中はいろいろ案内が表示されますが、これが格好良かった。
ちょっと使ってみた
総じて、サクサクと動くには動くのですが、熱が足を引っ張っている印象です。
重量級のFF XVのベンチマークをしている際には熱が原因と思われる強制終了が発生することもありました。
▲HW Monitorで見たベンチマーク後の状況です。
一番右が最高温度なのですが、とんでもないことになっています。これ、センサーの故障じゃないよね…?
一応、CPUは100℃が上限なので、許容範囲内ではありますが、この数字は怖いです。
ファンはうるさいくらいに回るのですが、音の割に風量が少ないのが問題です。なんでこんなに少ないの?
天板も放熱を兼ねているようでほんのり温かいのですが、全然追いついていません。
というか、メモリ・ストレージ側から吸気して、四方の隙間を抜けて、CPU側から排気される構造になっているわけですが、隙間が小さすぎてCPU側に空気が十分に回っていないようです。
そのため、メモリ・ストレージ側にも外気があまり入ってこず、ストレージの温度も上がり気味となります。
▲SSDは超高速モデルを使用しているのでちょっぱやなのですが
▲CrystalDiskInfoで見ると、SSD温度が78度まで上昇していました。
SSDの温度は寿命に直結するので、この温度はあまりよろしくないですね。
▲これは悪い見本。
ストレージを冷やすべく、直接風を当ててみましたが、CPU側には風が回らないのでストレージしか冷えないという。
これは素直に低発熱なSSDを導入した方がよさそうです。
それに、さすがにこんな見た目で常用はしたくないですしね…
ベンチマーク
対象アプリ一覧
CrystalDiskMark 6.0.2
PassMark 9.0
Geekbench 4.4.2
Geekbench 5.0.1
CrystalMark 2004R7 v0.9.200.452
CINEBENCH R15.0
PCMark 10
3D Mark v2.0.6762
DQ X ベンチマーク v1.51
FF XIV 紅蓮の解放者
FF XIV 漆黒の反逆者
FF XV v1.2
jetstream 2
BaseMark
WebXPRT
MotionMark
SpeedMeter2.0
octane
※ベンチマーク条件
DQ Xは1280×720・標準、および1920×1080・最高品質の2種類
FF XIV(紅蓮/漆黒)は1280×720・高品質(ノート)、および1920×1080・最高品質の2種類
FF XVは1280×720・標準のみ
結果総覧
熱に悩まされたりもしましたが、ベンチマークスコア自体はさすがCore i7という結果になっています。
比較対象はCore i5-8250Uを搭載した、Lenovo「IdeaPad 720S」です。
ゲームベンチマークでは、Core i5-820U、Core i7-8550Uともに同じUHD 620なのですが、スコアが大きく違っています。
考えられる要因はチューニングの違いくらいです。
前述したように、「PN60」はCPUの温度が限界近くまで上昇します。
おそらくですが、パフォーマンス重視のチューニングが施されており、限界まで性能を引き出しているものと思われます。
これはノートPC(特に薄型ノート)ではなかなかできないことですね。
他のスコアについては最後に付録として記載しています。
あと、ブラウザベンチマークでは何がダメなのか、ブラウザによっては動かないベンチマークがありました。
具体的にはChromeでMotionMarkが、EdgeでJetstream 2.0が動きませんでした。
ドライバを更新したりと限られた時間の中であれこれ試したのですが、残念ながら原因はつかめませんでした。
そのため、ブラウザベンチマークについては基本はChromeのスコアを使い、MotionMarkだけEdgeでのスコアとなっています。
消費電力・騒音について
消費電力はRATOC「WATTCHECKER」を、騒音計測はBENETECH「GM1356」を使用しています。
▲騒音測定は本体の30cm手前にマイクを設置して計測しました。
アイドル時 | 10.9W |
---|---|
画面オフ時 | 10.5W |
スリープ時 | 0.9W |
CINEBENCH(S) | 28.8W |
CINEBENCH(M) | 28W |
最大 | 34W 54.2W(瞬間) |
「PN60」の消費電力は、アイドル時はノートPCより高いものの、最大値はそれほど高くありません。
アイドル時は動作周波数は全コア399MHzまで落ちているのですが、何が電気を食っているんだろう…メモリかな…?
バッテリーを搭載しているわけではないので、充電電力+処理電力とならないのが、最大値が低い要因ですね。
それでもベンチマークアプリの起動の瞬間などは一瞬ですが50Wを超えることもあるので、65Wの電源アダプタは必要です。
▲「WATTCHECKER」のグラフですが、こんな感じに一瞬だけ跳ねています。
騒音(電源オフ) | 34.9dB |
---|---|
騒音(アイドル) | 40.6dB |
騒音(最大) | 48.2dB |
測定時間:深夜2時頃
騒音レベル[dB] | 音の大きさのめやす | 自室内の聞き騒音 | うるさい | 70 | 掃除機 騒々しい街頭 | うるさい | 非常にうるさい |
---|---|---|---|---|
60 | 普通の会話・チャイム 時速40キロの自動車の内部 | 非常に大きく聞こえうるさい 声を大きくすれば会話ができる | ||
普通 | 50 | エアコンの室外機 静かな事務所 | 日常生活で 望ましい範囲 | 大きく聞こえる 通常の会話は可能 |
40 | 深夜の市内 図書館 | 多少大きく聞こえる 通常の会話は十分に可能 | ||
静か | 30 | ささやき声 深夜の郊外 | 静か | 非常に小さく聞こえる |
20 | ささやき 木の葉のふれあう音 | ほとんど聞こえない |
前述のとおり、「PN60」の騒音は結構なものです。
48dBといえば、acerのゲーミングノート「Aspire 7 A715-72G-F58H」が同じくらいの音量です。
公式サイトではフルロード時34.2dB(Core i3モデル)とありますが、どのような条件での計測なんでしょう…
逆にレビューに使用した個体が、あちこちのレビュー試用で酷使・分解されて不調になっている可能性もありますが、判断は付きませんでした。
騒音を例えるならば、卓上のUSB扇風機くらいでしょうか。
音量としては同じくらいですが、扇風機がブオォーンと低音なのに対して、「PN60」はファアァーとやや高音なので、耳につきやすいです。
▲最大で6000rpmを超えるので、うるさくても当然ですね。
アイドル時は3000rpmくらいで、そのくらいなら隙間風のような音で気にならないレベルですが、ちょっと負荷をかけただけですぐに5000rpmくらいに跳ね上がります。
正直に言うと、卓上に置いて使用するには、ちょっとストレスになりそうです(特に普段は静音ノートを使っているので余計にうるさく感じます)。
▲試しに机の下の棚に置いてみました。
ここに置けるPCはそうそうないので、卓上も足元もすっきりします。これはいい。
机の下に置くと音量自体は一般的なデスクトップと同じくらいのになりましたが、高音気味なのでやっぱり気になりますね。
こればっかりはもうちょっとエアフローを考えて、静音で口径が大きく、大風量なファンにして欲しいとしか言えないです。
まとめ
115mm四方というサイズは本当に小さくて、眺めているだけでニヤニヤしてしまいます。
置き場所の選択肢も増えますし、気分は最高になります。本当、これで静かだったら…
冒頭にも書いたように、「PN60」はCore i5モデルとCore i7モデルが発売され、市場予想価格は以下のようになっています。
PN60-BB5087MH (Core i5-8250U):59,800円
PN60-BB7088MH (Core i7-8550U):73,800円
NUCとしては妥当な価格設定といったところでしょうか。
IntelのNUCシリーズのようにThunderbolt 3端子はありませんが、代わりにカスタマイズ可能な端子があることを考えると、トントンでしょう。
海外ではすでに第10世代かつConfigurable PortにThunderbolt 3を設定可能な「PN62」が発表されており、さらにアイドル時消費電力がかなり改善されているようです。
国内での発売はまだ先になるでしょうが、こちらもチェックですね。
関連リンク
Mini PC PN60:ASUS
Mini PC PN62:ASUS(※英語)
付録
ベンチマーク結果一覧
メーカー | ASUS | |
---|---|---|
モデル名 | PN60 | |
CPU | Core i7-8550U | |
GPU | UHD 620 | |
メモリ | 32GB | |
ストレージ | 512GB M.2 | |
PassMark | Total | 3953.3 |
CPU Single | 2310 | |
CPU Multi | 8654.9 | |
2D | 780.2 | |
3D | 1195.6 | |
Memory | 2715.3 | |
Disk | 20412.6 | |
CPU-Z | Single | 419.6 |
Multi | 2146.6 | |
GeekBench4 | Single | 4863 |
Multi | 13039 | |
OpenCL | 26687 | |
OpenCL(dGPU) | – | |
GeekBench5 | Single | 1120 |
Multi | 3203 | |
OpenCL | 5654 | |
OpenCL(dGPU) | – | |
CrystalMark | Mark | 339580 |
ALU | 90941 | |
FPU | 59873 | |
MEM | 71503 | |
HDD | 74314 | |
GDI | 22200 | |
D2D | 6520 | |
OGL | 14229 | |
CINEBENCH R15 | OpenGL | 52.58fps |
CPU(M) | 476cd | |
CPU(S) | 163cd | |
CINEBENCH R20 | CPU(M) | 1146pts |
CPU(S) | 384pts | |
PCMark | ALL | 4087 |
Essensial | 9172 | |
Productivity | 7117 | |
DigitalContent | 2840 | |
3DMark | TimeSpy | 413 |
Graphics | 360 | |
CPU | 2709 | |
FireStrike | 1134 | |
Graphics | 1253 | |
Phisics | 7458 | |
Combined | 5386 | |
NightRaid | 5253 | |
Grapihics | 5386 | |
CPU | 4612 | |
SkyDiver | 4326 | |
Graphic | 4070 | |
Phisics | 6758 | |
Combined | 4054 | |
CloudGate | 8152 | |
Graphics | 9609 | |
Phisics | 5326 | |
IceStorm | 64981 | |
Graphics | 80139 | |
Phisics | 39099 | |
IceStormEX | 47206 | |
Graphics | 50120 | |
Phisics | 39226 | |
IceStormUnlimited | 88217 | |
Graphics | 109928 | |
Phisics | 52161 | |
VR Mark | – | |
DQ | 1280・標準 | 9486 |
1920・最高 | 4906 | |
FF XIV 紅蓮 | 1280・標準 | 3372 |
1920・最高 | 1172 | |
FF XIV 漆黒の反逆者 | 1280・標準 | 3347 |
1920・最高 | 1192 | |
FF XV | 1280・標準 | 970 |
1920・最高 | – | |
MHF 大討伐 | 1280 | 5786 |
1920 | 2907 | |
ブラウザ | jetstream2 | 125.479 |
BaseMark | 524.64 | |
WebXPRT | 206 | |
MotionMark | 352.55 | |
SpeedMeter2.0 | 96.3 | |
octane | 45299 |
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