2021年1月29日、ASUSはデスクトップ向け第10世代Core CPUを搭載したミニPC「Mini PC VC66-C2」を2モデル発表いたしました。
記事公開日である本日2月5日発売です。
がじぇっとりっぷはこれまでデスクトップ機やデスクトップCPU搭載機はほとんどレビューしたことがなく、その性能は割と未知数だったのですが、ASUS様よりサンプル機(Core i7モデル)をお借りできたので、その性能を測っていきたいと思います。
サンプル機をご提供いただいたASUS様にはこの場をお借りして御礼申し上げます。
ASUS VC66-C2
■Mini PC VC66-C2 | |
CPU | Core i7-10700 Core i5-10400 |
---|---|
メモリ | 16GB DDR4-2933 (i7) 8GB DDR4-2666 (i5) |
ストレージ | 256GB NVMe SSD 1TB HDD |
インターフェース | USB Type-C(Gen1)×2 USB 3.2 Gen1×6 HDMI2.0 DisplayPort 1.2 SDXCカードリーダー オーディオジャック COMポート×1 |
wi-fi | 802.11ax(Wi-fi 6)+BT5.0 |
サイズ | 177.4×153×74.1mm |
重さ | 1.5kg |
GoodPoint
✔ 高性能なデスクトップCPU
✔ トリプルストレージが可能
✔ トリプルディスプレイが可能
✔ 思ったほどうるさくはない
BadPoint
✖ グラフィックは弱い
✖ 他のミニPCよりは一回り大きい
ハードウェア
パッケージ
▲届いた箱がやけに大きくてびっくりしたのですが、パッケージにキーボードとマウスが含まれているためでした。
▲本体はこれまでは不織布で包まれていましたが、電源アダプタを包むのと同じ薄手のシートに変更されていました。
付属品
▲紙類は5種類に大量のネジ、VESAマウンタです。
VESAマウンタは簡易ロック機構が改良され、ネジでロックを固定できるようになりました。
▲本体がやや大柄なので、VESAマウンタとのサイズ差はこんな感じです。
▲キーボードはUSB接続のフルサイズです。
キーストロークはほどよく、しっかり打鍵ができます。
▲キーボード背面です。
真ん中が空隙になっているので、強く打鍵しすぎるとちょっとたわみます。
▲マウスもUSB接続ですが、赤外線ではなくBlueLEDなのでガラス面でもきっちり反応してくれます。
▲電源アダプタは150W(7.5A@20V)出力です。
インターフェース
▲正面です。
USBは3ポートとも3.1 Gen1です。
電源スイッチは引っ込んだ位置にあり、ものが当たって誤作動といったことは起こりづらく、それでいて指では押しやすい絶妙な形状です。
表面のドットは模様で、穴は開いていません。
▲シックな正面とは打って変わって、背面にはインターフェースがずらりと並んでいます。
標準でCOMポートが搭載されていて、業務用にも使いやすくなっています。
HDMIとDisplayPort、Type-C to DPでのトリプルディスプレイにも対応しています。
消費電力が100Wを超えるため、Type-C端子はさすがにUSB PDには対応していません。
▲左側には吸気口が開いています。
吸気口の開け方がおしゃれですね。
▲右側には排気口。
ASUSのロゴがこっちにあるので、一瞬正面を間違えます。
ASUSのミニPCはいつも排気口が小さいのが気になっていましたが、「VC66-C2」はさすがに大きく開けられています。
しかし、吸排気口はこの左右だけなので、縦置きはできず、左右をもので塞ぐこともNGなので、置き場所には注意する必要があるでしょう。
▲底面にはメモリスロットが。
▲こんな感じで1枚分のスロットがあります。
分解・内部構造
本体を開けてしまうとサポートの対象外となります。
▲四隅のゴム足は簡単にスポッと抜け、奥にネジが隠されています。
▲ネジを外すとストレージ部を開けることができます。
「VC66-C2」には2.5インチストレージを2台搭載できます。
▲3.5インチHDDも入りそうな雰囲気ですが、高さが無理でした。
まぁ、3.5インチよりもストレージを2段重ねにしてクアッドストレージができるオプションの方がまだ需要がありそうですが…
▲ストレージの左右にはWi-fiアンテナが設置されています。
測定まではしていませんが、この位置だとアンテナを遮るものもないので、接続が安定しそうです。
▲Wi-fiアンテナ横のネジを一本外すことで内部にアクセスできます。
▲反対側から見たところ。
▲M.2 SSDとWi-fiカードが直角に交わる、不思議な設計。
▲もう1枚のメモリはここにありました。
▲ファンはかなり分厚いものが使われていて、風量が確保されています。
システム
起動前
▲BIOS(正しくはUEFI)はグラフィカルです。
▲温度やファンスピードも見ることができ、ファン設定も変更できます。
▲恒例のバックアップです。
使用したのは「Macrium Refrect Free」で、バックアップサイズは26.84GBでした。
HDD側(Dドライブ)は空っぽですね。
システム情報
▲デスクトップはほぼ何もないというか、すごくシンプルです。
▲システム情報です。
▲CPUは8コア16スレッドで壮観です。
▲HWiNFOで見るCPU情報。
▲マザーボード情報
チップはB460が使われているようです。
▲再起動直後のメモリ使用量
これまでのレビューだと2.2~2.4GBくらいが一般的でしたが、「VC66-C2」のメモリ消費量は2.0GBと少なめでした。
▲スタートアップ
▲デバイスマネージャ
有線LANはIntel I219-Vで、無線LANはIntel AX200でした。
ストレージ
▲CrystalDiskInfo
M.2 SSDはIntel 660pシリーズのSSDPEKNW256G8、HDDはSeagate Barracuda ProシリーズのST1000LM049です。7mmサイズのHDDで、7200rpmの高速モデルです。
▲CrystalDiskMark
HDDは公称の160MB/sを超えてきました。
M.2はそれほど速度が出ませんが、実用できないほどではありません。
それよりはQLCであることの方が気になります…
現在は4種類のメモリセルの製品が市場では販売されています。
・SLC(Sigle Level Cell):1セルに1ビットを格納。
・MLC(Multi Level Cell):1セルに2ビットを格納。
・TLC(Triple Level Cell):1セルに3ビットを格納。
・QLC(Quad Level Cell):1セルに4ビットを格納。
データは電荷の量で保存され、SLCは0か1で保存されます。
MLCは0~3と思いきや、実際は0、0.25、0.5、0.75と細かく刻んで保存されます。TLCなら8段階、QLCなら16段階ですね。QLCともなると0.0675刻みです。
しかもQLCでの書き込みの時、例えば13(2進数だと1101)なら0.8125で、一発では書き込めず、0.5+0.25+0.0675と3回書き込む必要があります。
これが、書き込み速度の低下につながるうえ、一回の書き換えで最大4回書き込むので、その分劣化も早くなります。
以上を踏まえたうえで、それぞれの特徴は表のようになります。
SLC | MLC | TLC | QLC | |
---|---|---|---|---|
書き込み速度 | とても速い | とても速い | 速い | とても遅い |
読み込み速度 | とても速い | とても速い | 速い | 速い |
レイテンシ | とても速い | やや速い | やや速い | 遅い |
書き換え回数 | 10万回 | 3000~1万回 | 1000~5000回 | 300~1000回 |
耐久性 | 高い | 高い | 普通 | 低め |
価格 | とても高価 | 高価 | やや安い | やや安い |
特徴 | ほぼ絶滅 使用時間には勝てない | プロ向け | 現在の主流 | 格安品はQLCが多い 実売価格はTLCと あまり変わらない |
ベンチマーク
対象アプリ一覧
PassMark 9.0
CPU-Z
Geekbench 4.4.2
Geekbench 5.0.1
CrystalMark 2004R7 v0.9.200.452
CINEBENCH R15.0
CINEBENCH R20
CINEBENCH R23
PCMark 10
3D Mark v2.0.6762
DQ X ベンチマーク v1.51
FF XIV 紅蓮の解放者
FF XIV 漆黒の反逆者
FF XV v1.2
MonsterHunter Frontier 大討伐
jetstream 2
BaseMark
WebXPRT
MotionMark
SpeedMeter2.0
octane
※ベンチマーク条件
■ ゲーム
DQ Xは1280×720・標準、および1920×1080・最高品質の2種類
FF XIV(紅蓮/漆黒)は1280×720・高品質(ノート)、および1920×1080・最高品質/高品質(ノート)/標準(ノート)の4種類
FF XVは1280×720・標準のみ
■ 騒音
対象機材の端、またはヒンジから30cmの位置
結果総覧
とにかくCPUモンスターです。
8コア16スレッドは伊達ではなく、モバイル向けCPUではなかなかたどり着けないレベルの処理能力の高さを見せています。
一方でグラフィック能力は高くはなく、ゲームをプレイできるというレベルには程遠いです。
デスクトップCPUはグラフィックボードと組み合わせることも多く、あくまで「単体でも画面表示可能」程度でしょう。
ゲーミングベンチマークは比較対象として同じASUS製品の「PN50(Ryzen 5 4500U)」「PN62(Core i7-10510U)」のベンチマークデータを使用しました。
CPU
CPU性能はさすがデスクトップ向CPUだけあって、圧巻の一言です。
モバイル向けのほぼすべてのCPUは太刀打ちできず、ゲーミング向けハイパフォーマンスCPUでもIntel系最上位のCore i9-10980HKを超えています。
さすがにRyzen 9 5900HXには勝てていませんが、Ryzen 9 5900HX搭載機って30万円コースですからね…
GPU
3DMark FireStrike
CPU性能が高い一方で、グラフィックはUHD 630と、決して高いとは言えません。
かろうじてCore i7-10510Uには勝っていますが、同等といっていいでしょう。
4K映像を鑑賞するとか、トリプルディスプレイで事務作業をするとかくらいならできますが、ゲームをできるほどの力はありません。
[軽量級] DQベンチマーク
DQベンチマークはCPU処理の比重が大きいようで、グラフィック能力の低いCore i7-10700でも比較的高いスコアを示しました。
[中量級] FF XIV 漆黒のヴィランズ
各CPUのグラフィック能力の関係が一番わかりやすいのが中量級です。
スコアの比率も3DMarkスコアに近いものとなりました。
ちなみにFHD解像度で画質を最低にまで落とすとスコアは「3175(やや快適)」となりました。
[重量級] FF XV Windowsエディション
重量級のFF XVはどうあがいても無理ですね。
消費電力・稼働時間・騒音・温度
消費電力
アイドル時 | 0.5-17.6W |
---|---|
画面オフ時 | 0.1-47.8W |
CINEBENCH(S) | 46.5W |
CINEBENCH(M) | 129W |
最大 | 146W |
消費電力は、アイドル時は安定せず、下のグラフのようにふらふらしていました。
画面がオフになると5W弱くらいである程度安定するのですが、時折50W近いスパイクが発生するようになりました。
フルロード時は146Wと、電源アダプタ(150W)のほぼ限界まで使っています。
騒音
状況 | 音量 | 聞こえ方 |
---|---|---|
電源オフ | 35.3dB | |
アイドル | 35.9dB | うっすらと音がする |
最大 | 43.4dB | 低い唸り音 |
最大(排気口) | 45.9dB | 低い唸り音に多少の風切り音 |
騒音レベル[dB] | 音の大きさのめやす | 自室内の聞き騒音 | |
---|---|---|---|
うるさい | 70 | 掃除機 騒々しい街頭 | 非常にうるさい |
60 | 普通の会話・チャイム 時速40キロの自動車の内部 | 非常に大きく聞こえうるさい 声を大きくすれば会話ができる | |
普通 | 50 | エアコンの室外機 静かな事務所 | 大きく聞こえる 通常の会話は可能 |
40 | 深夜の市内 図書館 | 多少大きく聞こえる 通常の会話は十分に可能 | |
静か | 30 | ささやき声 深夜の郊外 | 非常に小さく聞こえる |
20 | ささやき 木の葉のふれあう音 | ほとんど聞こえない |
「VC66-C2」はノート向けより発熱の大きいデスクトップ向けCPUを使っているためファンが回りやすいのですが、厚みのある大口径のファンを使っているので、ファン音は低く唸るような音です。全開時はそれなりに耳につきますが、高周波音がないので気に障るような音ではありません。
分類でいえば掃除機の音(を5分の一にしたくらい)が近いです。昼間の事務フロアであれば、音が気になることはそうそうないでしょう。
割と早い段階(CPU温度が70度を超えたくらい)でファンを回すのでCPU温度もあまり上がらず、風量が多いのですぐに冷えます。
フルロードをかけてファンを全開にしても、処理を停止した5秒後には50度台まで下がり、10秒もすれば低速回転になっているくらいです。
まとめ
「VC66-C2」は、グラフィックはそんなにいらないけど、とにかくCPUの処理能力が欲しいという用途にはぴったりです。
トリプルストレージも可能なので、例えば大量のデータを処理するとか、中小企業内のデータを集中管理するとか、そういった業務には向いているでしょう。
あえて言うなら、LANポートをせめて2.5GbEにして欲しかったくらいでしょうか。
用途の方向性がはっきりしている分、欠点があまり見当たらない機種といえます。
関連リンク
付録
ベンチマーク結果一覧
メーカー | ASUS | |
---|---|---|
モデル名 | VC62-C2 | |
CPU | Core i7-10700 | |
GPU | UHD 630 | |
メモリ | 16GB | |
ストレージ | 256GB SSD 1TB HDD | |
PassMark | Total | 4807.5 |
CPU Single | 2818 | |
CPU Multi | 19440.3 | |
2D | 874.7 | |
3D | 1435.4 | |
Memory | 3318.7 | |
Disk | 5804.9 | |
CPU-Z | Single | 544.6 |
Multi | 5444.5 | |
GeekBench4 | Single | 6023 |
Multi | 31653 | |
OpenCL | 26199 | |
OpenCL(dGPU) | – | |
GeekBench5 | Single | 1293 |
Multi | 7752 | |
OpenCL | 6326 | |
OpenCL(dGPU) | – | |
CrystalMark | Mark | 688602 |
ALU | 268343 | |
FPU | 194562 | |
MEM | 126782 | |
HDD | 49004 | |
GDI | 21946 | |
D2D | 6842 | |
OGL | 21123 | |
CINEBENCH R15 | OpenGL | 64.89fps |
CPU(M) | 1679cd | |
CPU(S) | 205cd | |
CINEBENCH R20 | CPU(M) | 3852pts |
CPU(S) | 498pts | |
CINEBENCH R23 | CPU(M) | 9931pts |
CPU(S) | 1265pts | |
PCMark | ALL | 4856 |
Essensial | 10304 | |
Productivity | 7784 | |
DigitalContent | 3875 | |
3DMark | TimeSpy | 540 |
Graphics | 464 | |
CPU | 8064 | |
FireStrike | 1367 | |
Graphics | 1488 | |
Phisics | 21748 | |
Combined | 454 | |
NightRaid | 7157 | |
Grapihics | 6673 | |
CPU | 12163 | |
SkyDiver | 5498 | |
Graphic | 4857 | |
Phisics | 18124 | |
Combined | 5219 | |
CloudGate | 12402 | |
Graphics | 11607 | |
Phisics | 16313 | |
IceStorm | 75017 | |
Graphics | 76840 | |
Phisics | 69266 | |
IceStormEX | 53473 | |
Graphics | 50199 | |
Phisics | 69297 | |
IceStormUnlimited | 102441 | |
Graphics | 117055 | |
Phisics | 71290 | |
VR Mark | ||
DQ(DX9) | 1280・標準 | 14189 すごく快適 |
1920・最高 | 7452 とても快適 | |
FF XIV(DX11) 紅蓮 | 1280・標準 | 4058 快適 |
1920・最高 | 起動せず | |
1920・標準 | 2068 普通 | |
1920・低 | 3275 やや快適 | |
FF XIV(DX11) 漆黒の反逆者 | 1280・標準 | 3995 快適 |
1920・最高 | 1320 設定変更 | |
1920・標準 | 2020 普通 | |
1920・低 | 3175 やや快適 | |
FF XV(DX11) | 1280・標準 | 1183 動作困難 |
1920・最高 | – | |
MHF(DX10) 大討伐 | 1280 | 8026 |
1920 | 4215 | |
ブラウザ | jetstream2 | 159.45 |
BaseMark | 779.33 | |
WebXPRT | 238 | |
MotionMark | 329.18 | |
SpeedMeter2.0 | 118.8 | |
octane | 56147 |
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