2020年10月末、LenovoはRyzen搭載ミニPC「ThinkCentre M75q Tiny Gen2」(以下M75q Gen2)を発売しましたが、売れ行きが良かったのか部材調達が遅れたのか、2021年1月下旬に販売停止となっていました。
2021年3月末にようやく販売再開したので、ちょっと遅くなりましたが、がじぇっとりっぷもレビューをお届けします。
前世代「ThinkCentre M75q-1 Tiny」のレビューはこちら。
Lenovo ThinkCentre M75q Tiny Gen2
CPU | Ryzen 7 PRO 4750GE Ryzen 5 PRO 4650GE Ryzen 3 PRO 4350GE |
---|---|
メモリ | 4~16GB DDR4-3200 |
ストレージ | 256~512GB NVMe SSD |
インターフェース | USB Type-C(Gen2)×1 USB 3.2 Gen2×1 USB 3.0×2 USB 2.0×2 HDMI DisplayPort 有線LAN オーディオジャック |
wi-fi | 802.11ax+BT5.1 |
サイズ | 182.9×179×36.5mm |
重さ | 1.25kg |
GoodPoint
✔ コンパクト感そのままに性能アップ!
✔ USB 3.2 Gen2搭載
✔ 内部アクセス性が良い
BadPoint
✖ カスタマイズ部材の入手性
ハードウェア
パッケージ
「M75q Gen2」は格安購入手段があり、がじぇっとりっぷもその手順に則って購入しています。購入したのはRyzen 7 PRO 4750GEモデルです。
ただし最低価格での購入ではなく、Wi-fiとスタンド、Type-C端子を追加しています。
付属品
紙類は5種類。ここは他のLenovo製品と変わりません。
電源アダプタは65W出力。
前世代の「M75q-1」は容量の大きい電源アダプタに変えることでパフォーマンスが大幅に向上するという裏技がありましたが、「M75q Gen2」ではなくなったため、付属アダプタで十分です。
スタンドは前世代よりスタイリッシュになり、安定性も増しています。
スタンドの役目は安定感だけでなく、下側になる吸気口のスペースを開けるという目的もあります。
スタンドに置くとこんな感じ。
本体左右にも少し隙間ができるので、スタンドで隠れている吸気口にも少しは空気が流れ込むようです。
アンテナは背面に挿し込みます。
インターフェース
・オーディオジャック
・USB 3.1 Gen2
・USB Type-C 3.1 Gen2
・電源ボタン
・電源コネクタ
・DisplayPort
・USB 3.1 Gen1
・HDMI
・USB 3.1 Gen1
・USB 2.0×2
・USB Type-C 3.1(カスタマイズによる選択、DP出力対応)
・イーサネット・コネクター(RJ-45)
・Wi-fiアンテナ(カスタマイズによる選択)
インターフェースは前面がUSB 3.1 Gen2(最大10Gbps)にグレードアップしています。
高速なUSBメモリとか、外付けSSDとかを繋ぐときに重宝します。
背面はカスタマイズでUSB Type-Cを追加。
前世代「M75q-1」では、カスタマイズ項目にUSB Type-Cはなかったんですよね。
追加したType-Cは映像出力&USB給電に対応しているので、ケーブル一本でモバイルディスプレイを表示させることができます。
ケーブル周りがすっきりするので、おすすめのカスタマイズです。
本体左右は吸気口のみです。
筐体
「M75q-1」では前面だけだった吸気口が、フロントパネルの上下にも追加されました。
天面はRyzenのシールのみ。
底面は「M75q-1」と同じ形のフタがされています。
ラベルのアップです。
2020年12月製造になっていました。
「M75q-1」と比較
「M75q-1」と並べたところ。デザインは好みが分かれるところですね。がじぇっとりっぷはシックな雰囲気の「M75q Gen2」の方が好みです。
右側の吸気スペースが減っていますが、その分をフロントパネル上下で補っています。
あと、地味に天面のロゴがなくなっていますね。
サイドも地味に吸気口が増えていたりします。
上が「M75q-1」、下が「M75q Gen2」です。
インターフェースに大きな差はありませんが、排気口が少し広がり、左下にアンテナスペースが追加されています。
「M75q-1」ではあとからWi-fiを増設するときは、アンテナ穴が一つしかなく大変だったので、この改良はうれしいですね。
もっと地味なところではインターフェースのラベル位置の変更なんかもあります。
分解・内部構造
「M75q Gen2」はネジ一本外すだけで内部にアクセスできます。
2.5インチ用ベイはワンタッチで着脱可能
2.5インチベイの下にはWi-fiカードが隠れています。
そしてPCIeスロットとWWAN用と思しきスペースが。
Lenovoは「ThinkStation P340 Tiny」という、TinyサイズでNVIDIA Quadro P1000/P620を搭載するという、変態極まりない機種を販売しています。
2.5インチスペースと背面のカスタマイズポートを潰して、グラフィックボードを載せているんですね。
「P340 Tiny」はIntel CPUですが、ボード全体の設計を流用していると思われるため、PCIeスロットスペースが残されているわけです。
逆に今後AMDのグラボ搭載モデルを出す布石だったら面白いですね。
本体前面のWi-fiアンテナ。
購入時にWi-fiを選択しておかないと、このアンテナが付いてきません。
とはいえ左側面には前面アンテナ用のアンテナ穴があるので、必須とまではいかなくなりました。
これも「M75q-1」にはなかったもので、地味な改良点ですね。
底面の蓋を開けると、SSDとメモリにアクセスできます。
SSDの横には未実装の空きM.2スペースがありますが、ThinkStationではこれが実装され、デュアルストレージができます。
筐体の製造日は2020年11月だった模様。
システム
起動前
UEFIはグラフィカルかつ見やすく整理されています。
UEFIとは別に診断モードも用意されています。
恒例のバックアップです。
使用したのは「Macrium Refrect Free」で、バックアップサイズは23.12GBでした。
システム情報
デスクトップは「M75q-1」と同じようで違う背景が使われています。
システム情報。
ストレージは207GB空いているので、100GBサイズのゲームを複数インストールするとかでない限り、そうそう足りなくなることはないでしょう。
HWiNFOの情報。
グラフィックはPCIe 4.0接続となっています。
マザーボードのモデル名は「Lenovo 3190」。
再起動直後のメモリ使用量は2.0GB。
多くもなく少なくもなく、平均的です。
スタートアップはRadeon関係のソフトが入っていました。
デバイスマネージャ。
有線LANはRealtek、無線LANはIntel AX200です。
ストレージ
CrystalDiskInfo。
UMISとは中国Union Memory(圳忆联信息系统有限公司)のことです。
先日レビューした「Yoga 750i」にも使われていました。
CrystalDiskMarkの結果。
同じUMIS製でも「Yoga 750i」よりも高速とか…
ベンチマーク
レビュー機のスペック
レビュー機のスペックは以下の通り。
CPU | Ryzen 7 4750GE |
---|---|
グラフィック | Radeon 8 Graphics |
メモリ | 8GB(シングル) 16GB(8GB×2)(デュアル) |
ストレージ | 256GB M.2 NVMe SSD |
対象アプリ一覧
PassMark 9.0
CPU-Z
Geekbench 4.4.2
Geekbench 5.0.1
CrystalMark 2004R7 v0.9.200.452
CINEBENCH R15.0
CINEBENCH R20
CINEBENCH R23
PCMark 10
3D Mark v2.0.6762
DQ X ベンチマーク v1.51
FF XIV 紅蓮の解放者
FF XIV 漆黒の反逆者
FF XV v1.2
MonsterHunter Frontier 大討伐
jetstream 2
BaseMark
WebXPRT
MotionMark
SpeedMeter2.0
octane
※ベンチマーク条件
■ ゲーム
DQ Xは1280×720・標準、および1920×1080・最高品質の2パターン
FF XIV(紅蓮/漆黒)は1280×720・高品質(ノート)、および1920×1080・最高品質/高品質(ノート)/標準品質(ノート)の4パターン
FF XVは1280×720・標準のみ
■ 騒音
対象機材の端、またはヒンジから30cmの位置
結果総覧
スコアの比較として、以下の機種のスコアを用いています。
「M75q-1」(Ryzen 5 3400GE):8GBシングルチャネル/65Wアダプタ使用時
「M75q-1」(Ryzen 5 3400GE):32GBデュアルチャネル/130Wアダプタ使用時
「Yoga 750i」(Core i7-1165G7):16GBデュアルチャネル
「M75q Gen2」は「M75q-1」と同様、メモリの影響(シングルチャネル/デュアルチャネル)を大きく受けます。
そのため、今回は8GBシングルチャネルと16GBデュアルチャネルでベンチマークを計測しています。
影響が一番大きいのはグラフィック関係のベンチマークですが、CPU処理もメモリの読み書きが発生するようなものは最大で2割近くスコアが変化しています。
グラフィック性能は冷却能力がいいのか、高負荷なほどスコアが伸びる傾向にありました。
シングルチャネル時とデュアルチャネル時では倍近いスコア差が出ることもあり、よほどの理由がない限り、メモリを足してデュアルチャネルにした方がいいでしょう。
CPU
「M75q-1」はRyzen 5 3400GE(4コア8スレッド)搭載機で、8コア16スレッドなRyzen 7 PRO 4850GEと厳密な比較はできませんが、シングル時/デュアル時ともにスコアが2倍近くになっています。
というか、デュアルチャネル時はさらっと同じ8コア16スレッドであるRyzen 7 5700Uのスコアも上回り、TDP45WとRyzen 7 PRO 4850GEより高いTDPで動作するRyzen 7 4800Hに迫っています。
「Yoga 750i」はRyzen 7 4850GE(TDP35W)に近いTDP28Wで動作し、スコアのばらつきの大きいTigerLake搭載機の中では高いスコアを出していますが、「M75q Gen2」のシングルチャネル動作時にも届いていません。
比較対象がモバイル向けCPUとは言え、これだけ高いスコアを出すのであれば文句はないでしょう。
GPU
3DMark FireStrike
3DMark FireStrikeのスコアは、GeForce MX350以上GeForce MX450(12W)以下となりました。
何気に性能が高くてRyzen 7 4700Uをかなり引き離し、グラフィック性能に定評のあるTigerLakeといい勝負になっています。
[軽量級] DQベンチマーク
軽量級のドラクエベンチマークは高いスコアはぶれやすいのですが、なんとなく上下関係がつかめます。
「M75q Gen2」であれば、フルHD/最高品質でもストレスなくプレイできそうです。
[中量級] FF XIV 漆黒のヴィランズ
中量級のFF XIVベンチマークもスコア順序はドラクエベンチマークと変わりません。
「M75q Gen2」はフルHD解像度でも画質を標準(ノート)まで落とせばスコアが6177(とても快適)となり、プレイに支障がなくなります。
なお、「Yoga 750i」では”フルHD/標準(ノート)”で4489(快適)だったので、高負荷時の性能の伸びはデスクトップ機の面目躍如といったところでしょうか。
[重量級] FF XV Windowsエディション
割と衝撃だったのが、重量級のFF XVベンチマークです。なんとかプレイ可能な”普通”評価となりました。
「Yoga 750i」のスコアが伸び悩んでいるのを見ると、デスクトップ機ならではの冷却能力とか、高負荷時の性能維持能力とかが考えられますが、ここまで伸びるとは思っていませんでした。
消費電力・稼働時間・騒音・温度
消費電力
アイドル時 | 4.6W |
---|---|
画面オフ時 | 4.0W |
スリープ時 | 0.9W |
CINEBENCH(S) | 18.3W |
CINEBENCH(M) | 59W |
最大 | 59W |
消費電力は電源アダプタの65Wに収まる範囲で推移します。
これは90Wや135Wといった大容量のアダプタを使った時も同じで、65Wどころか60Wも超えませんでした。
よって「M75q-1」の時のような、大容量アダプタでさらなる性能アップ!ということはできません。
騒音
状況 | 音量 |
---|---|
電源オフ | 35.0dB |
アイドル | 36.5dB |
最大 | 47.8dB |
最大(背面) | 47.0dB |
最大(サイド) | 52.1dB |
騒音レベル[dB] | 音の大きさのめやす | 自室内の聞き騒音 | |
---|---|---|---|
うるさい | 70 | 掃除機 騒々しい街頭 | 非常にうるさい |
60 | 普通の会話・チャイム 時速40キロの自動車の内部 | 非常に大きく聞こえうるさい 声を大きくすれば会話ができる | |
普通 | 50 | エアコンの室外機 静かな事務所 | 大きく聞こえる 通常の会話は可能 |
40 | 深夜の市内 図書館 | 多少大きく聞こえる 通常の会話は十分に可能 | |
静か | 30 | ささやき声 深夜の郊外 | 非常に小さく聞こえる |
20 | ささやき 木の葉のふれあう音 | ほとんど聞こえない |
「M75q Gen2」のファンは1500RPMを超えた辺りから音がし始め、最大で2700RPM近くまで回転数が上がります。
音はザアァァといった感じの、室内で聞く土砂降りのような音です。やや高音気味で、気になる人は気になる類の音ですね。
熱がこもりやすいのか、フル稼働を停止してもファン音が静かになる(=CPU温度が下がる)のに30秒以上かかります。
面白いのが、ファンの位置が右手前なので、右サイドが一番うるさいんですよね。
なので、右サイドを下にして縦に置くと、ほんの少し音が弱くなります。
温度
Ryzen 7 PRO 4750GEの仕様上の最大温度は95℃です。
実際に負荷をかけてみると、65℃を超えた辺りからファンが音を立てて回り始め、頑張っても78℃までしか上がりませんでした。
少々うるさいですが、温度を気にせずにぶん回せますね。
まとめ
「M75q Gen2」は前世代から大幅に性能がアップした良機種です。
今回レビューしたのは上位のRyzen 7モデルですが、最安値はギリギリ5万円台なんですよね。正直言って、いい意味で価格と性能が見合っていないと思います。
性能が高いのでテレワークも十分に対応できますし、グラフィック能力もあるので軽量級・中量級ゲーム用にしてもいいでしょう。
どういう使い方をしても平均以上にこなせるコンパクトPCと言えそうです。
関連リンク
付録
ベンチマーク結果一覧
メーカー | Lenovo | ||
---|---|---|---|
モデル名 | M75q Gen2 | ||
CPU | Ryzen 7 4750GE | ||
GPU | Radeon 7 | ||
メモリ | 8GB | 16GB | |
ストレージ | 256GB | ||
PassMark | Total | 4497.6 | 5281.9 |
CPU Single | 2960 | 2919 | |
CPU Multi | 14051.2 | 18517.2 | |
2D | 723.4 | 715.3 | |
3D | 1890.6 | 3528.6 | |
Memory | 2277.5 | 2710.7 | |
Disk | 15771.7 | 15300.6 | |
CPU-Z | Single | 532.5 | 531.7 |
Multi | 5321.7 | 5338.8 | |
GeekBench4 | Single | 5179 | 5547 |
Multi | 23368 | 29026 | |
OpenCL | 40044 | 56964 | |
OpenCL(dGPU) | – | – | |
GeekBench5 | Single | 1228 | 1242 |
Multi | 6002 | 7762 | |
OpenCL | 13001 | 16401 | |
OpenCL(dGPU) | – | – | |
CrystalMark | Mark | 601603 | 721008 |
ALU | 276821 | 275446 | |
FPU | 175504 | 172411 | |
MEM | 89387 | 115688 | |
HDD | 65034 | 63760 | |
GDI | 17304 | 17743 | |
D2D | 6963 | 8043 | |
OGL | 60610 | 67917 | |
CINEBENCH R15 | OpenGL | 46.82fps | 74.14fps |
CPU(M) | 1782cd | 1793cd | |
CPU(S) | 194cd | 193cd | |
CINEBENCH R20 | CPU(M) | 4111pts | 4140pts |
CPU(S) | 495pts | 495pts | |
CINEBENCH R23 | CPU(M) | 10671pts | 10673pts |
CPU(S) | 1271pts | 1272pts | |
PCMark | ALL | 5614 | 5966 |
Essensial | 10022 | 10174 | |
Productivity | 8592 | 8683 | |
DigitalContent | 5579 | 6526 | |
3DMark | TimeSpy | 942 | 1563 |
Graphics | 823 | 1374 | |
CPU | 5408 | 7107 | |
FireStrike | 2261 | 3932 | |
Graphics | 2526 | 4336 | |
Phisics | 19750 | 21273 | |
Combined | 726 | 1346 | |
NightRaid | 9668 | 13866 | |
Grapihics | 10292 | 17958 | |
CPU | 7199 | 6053 | |
SkyDiver | 9393 | 14644 | |
Graphic | 8919 | 14296 | |
Phisics | 15149 | 18033 | |
Combined | 8019 | 13329 | |
CloudGate | 17750 | 21518 | |
Graphics | 18881 | 30801 | |
Phisics | 14674 | 10472 | |
IceStorm | 101255 | 121473 | |
Graphics | 117424 | 156577 | |
Phisics | 68327 | 68065 | |
IceStormEX | 80144 | 103024 | |
Graphics | 84813 | 120899 | |
Phisics | 67199 | 67893 | |
IceStormUnlimited | 142862 | 150649 | |
Graphics | 195843 | 218799 | |
Phisics | 73382 | 72076 | |
VR Mark | 2081 | ||
DQ(DX9) | 1280・標準 | 13484 すごく快適 | 17967 すごく快適 |
1920・最高 | 6676 快適 | 11555 すごく快適 | |
FF XIV(DX11) 紅蓮 | 1280・標準 | 4518 快適 | 7836 非常に快適 |
1920・最高 | 1924 設定変更 | 3421 やや快適 | |
1920・標準 | 2561 やや快適 | 4742 快適 | |
1920・低 | 3214 やや快適 | 6177 とても快適 | |
FF XIV(DX11) 漆黒の反逆者 | 1280・標準 | 4348 快適 | 7482 非常に快適 |
1920・最高 | 1893 設定変更 | 3458 やや快適 | |
1920・標準 | 2471 普通 | 4596 快適 | |
1920・低 | 3013 やや快適 | 5829 とても快適 | |
FF XV(DX11) | 1280・標準 | 1972 動作困難 | 3400 普通 |
1920・最高 | – | – | |
MHF(DX10) 大討伐 | 1280 | 7543 | 14129 |
1920 | 4112 | 7699 | |
ブラウザ | jetstream2 | 139.277 | 144.716 |
BaseMark | 864.72 | 1003.04 | |
WebXPRT | 216 | 226 | |
MotionMark | 346.42 | 359.79 | |
SpeedMeter2.0 | 105.3 | 107.1 | |
octane | 51458 | 51547 |
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