2021年3月、安価なノートPCやタブレットを販売するTECLASTから、ミドルクラスとなるUNISOC T610を搭載した「M40SE」が発売されました。
位置づけとしてはUNISOC T618を搭載する「M40」の別バージョン的な製品で、SoCの性能的にはそこまで違わないようです。「M40」のレビューは数あれど「M40SE」は見当たらず(出たばかりですしね)、ならば試してみようとばかりにレビューにこぎつけました。
製品を提供いただいたBanggood様にはこの場をお借りして御礼申し上げます。
TECLAST M40SE
CPU | UNISOC T610 |
---|---|
メモリ | 4GB LPDDR4 |
ストレージ | 128GB |
画面 | 10.1インチ IPS WUXGA |
インターフェース | USB Type-C(Gen1)×1 microSDXC/nanoSIM オーディオジャック ドッキングポート |
wi-fi | 802.11ac+BT5.0 |
カメラ | フロント:2MP、リア:5MP |
バッテリー | 6000mAh |
サイズ | 241×159×9.2mm |
重さ | 0.52g |
GoodPoint
✔ タブレットとしては高性能
✔ 見やすい大きな画面
✔ 802.11ac(Wi-fi 5)対応
BadPoint
✖ オーディオジャックがない
✖ カメラがしょぼい
✖ 内部の固定が甘い?
M40との違いについて
実はがじぇっとりっぷも実物を見るまで、「M40SE」はワンランク下のSoCにメモリを減らした「M40」の廉価版だとばかり思っていました。
しかし実際に比べてみると、そもそも筐体そのものが異なっていますし、完全に別物ですね。
分かりやすく比較してみました。
まず、筐体の角の丸みが違いますし、カメラ部の形も違います。ベゼルの太さも異なっていますし、なんならボタン位置も違っています。
Wi-fiアンテナ部となるプラスチック部分の形状も違っていますね。
仕様面での差は以下の通り。
M40SE | M40 | |
---|---|---|
SoC | UNISOC T610 (2 x A75 + 6 x A55) | UNISOC T618 (2 x A75 + 6 x A55) |
動作周波数 | 1.8GHz + 1.8GHz | 2.0GHz + 1.8GHz |
GPU | Mali-G52 (614.4MHz) | Mali-G52 (850MHz) |
メモリ | 4GB | 6GB |
ストレージ | 128GB | |
画面 | 10.1インチ WUXGA(1920×1200) | |
カメラ | フロント:2MP リア:5MP | フロント:5MP リア:8MP |
オーディオジャック | なし | あり |
ドッキングポート | あり | なし |
バッテリー | 6000mAh | |
4G | GSM:B2,B3,B5,B8 WCDMA:B1,B2,B5,B8 TD-LTE:B38、B39,B40,B41 FDD-LTE:B1,B2,B3,B5,B7,B8,B17,B20 TDCMA:B34,B39 | GSM:B2,B3,B5,B8 WCDMA:B1,B2,B5,B8 TD-LTE:B38、B39,B40,B41 FDD-LTE:B1,B3,B5,B7,B8,B20,B34 |
サイズ | 241×159×9.2mm | 243×163×9.3mm |
重量 | 520g | 529g |
性能面で大きな差となっているのはGPUの動作周波数とメモリです。CPU部分はBigコアが200MHz差なだけなので、差としては小さいです。
インターフェースではオーディオジャックかキーボード用のドッキングポートかみたいになっています。
4G/LTEの対応バンドがわずかに異なっていますが、異なる部分はそもそも日本国内では使われていないので、影響はありません。
ハードウェア
パッケージ
▲何だか妙に明るい雰囲気の箱が届きました。
▲個人的にツボったのがこのブランドロゴ。某タブレットに対抗心を燃やしているような名称が。
▲箱の側面と裏側は蛍光オレンジ。
今までいろいろレビューしてきましたが、過去一番に派手な箱でした。
▲側面にはバーコードと運送用のバッテリー情報。
航空便輸送ではセル当たり20WHr以下、バッテリー全体で100WHr以下、バッテリー情報を外箱に記載という制限があるため、それに対応したものです。
▲パッケージ全体はシンプルめ。
付属品
▲紙類は説明書、保証書、ファンクラブ案内の3種類
▲マニュアルには日本語の説明も記載されています。
▲充電アダプタは中国に多いCタイプのプラグ。この手の場合はおまけで変換プラグが付くことが多いのですが、今回はありませんでした。まぁ、そもそもPSEマークがないので使用は控えるのですが。
USBケーブルはちょっと太めのあまり安物感のないものです。
microSD/SIMトレーを引き出すためのピンも付属しています。
本体
▲液晶面です。
2.5Dとあるように、フチの部分が心持ち丸くなっています。
下部のドッキングポートにはキーボードを装着できるのですが、記事執筆時点ではキーボード付きのモデルはBanggoodでは取り扱っていません(AliExpressの公式ストアにはいつの間にか追加されていました)。
▲ベゼル幅は11.5mm
10インチサイズのタブレットって、狭額ベゼルを見かけないのはなんででしょうね?
▲背面にもなぜか保護シール
しかもディスプレイ面と違ってかなり雑に貼られています。
▲背面には技適マークも記載されていますが、技適番号が載っていません。
どうも国内流通版には技適番号入りのシールが追加で貼られるようです(技適番号がないと仕様違反)。
TECLASTは試作機ベースで承認を取るようなので、おそらくは下記リンク先が「M40SE」の技適になると思われます。
・電源ボタン
・スピーカー
■右
なし
・ドッキングポート
■左
・ボリュームボタン
・リセット穴
・Type-C端子
・microSD/SIMスロット
インターフェース画像がうまく撮れなかったので公式サイトより。
正面を向いて上と左に分散しています。
▲電源ボタンとボリュームボタンが別の向きにあるのはなんとも違和感を覚えます。
▲ディスプレイには最初から保護フィルム+輸送用フィルムが貼られています。これも最近の定番になりつつありますね。
ところでSTEP①は何だったんだろう…
▲専用フィルムなので、フロントカメラの切り欠きもばっちりです。
▲リアカメラは出っ張っており、ディスプレイ面を上に向けて机の上に置くとがたつきます。
ここはなんとか中に収めるとか頑張ってほしかったなぁと。値段なりと言ってしまえばそれまでですが。
▲カードスロットはmicroSD/nanoSIM共用タイプ。
最近のスマホやタブレットでは定番ですね。
重量
▲仕様では本体重量は520gでしたが、実測では527gでした。電源アダプタ込みでは601gです。
比較
▲Nexus 7(7インチ)、Alldocube「iPlay 8T」(8インチ)、ティッシュ箱とのサイズ比較。
「iPlay 8T」とは二回りほど大きさが違っていて、片手で握れる限界を軽く超えています。
システム情報
▲起動時のロゴ
▲トップ画面の背景は青系です。
▲アプリ一覧
特に変わったものは入っていません。
▲Androidバージョンは10でした。
発売されて間もないので、アップデートはまだ来ていません。
▲デバイス情報とストレージ。
素の状態でも11GB使っています。Androidもだんだん大容量化しているなぁ…
▲ストレージの速度はリード220MB/s、ライト150MB/s。
SDカードはリード80MB/s、ライト55MB/sで「iPlay 8T」(リード42MB/s、ライト35MB/s)より速度が出ています。
とはいってもSDカード本来の転送速度にはまだまだ及んでいません。
▲起動後のメモリ使用量は1.8GB。空きは2.1GBなので半分近く使っています。
「M40(メモリ6GB)」は、空き容量でいえば「M40SE」の二倍近くになると考えると、2GBの差は大きいですね。
▲Wi-fiは802.11ac(Wi-fi 5)対応
おそらくは最大433Mbpsと思われます。
最近では減ってきましたが安価な製品だと802.11b/g/n(Wi-fi 4)までとか、2.4GHz帯のみとかもあるので、きっちり5GHzまで対応しているのはありがたいですね。
がじぇっとりっぷ家では電波干渉で速度が低下することを避けるために2.4GHz帯はオフにしているので、5GHz帯対応がないと普段使いには厳しいです。
使用感について
操作感
「M40SE」の動作はキビキビとしていて画面切り替えも早く、ストレスは全く感じません。
タッチは、スマホや高級タブレットに比べてやや摩擦が強く感じます。
とはいえ操作に引っかかりを感じるほどではなく、比較してようやく滑りが悪いと分かる程度です。
気になる場合は保護フィルムを張り替えるといいでしょう。
一点だけ気になる点がありました。
個体差か組み立てが悪かったのかは不明ですが、本体を軽くひねるとギシギシと音がして内部にがたつきを感じます。もうちょっと強くひねるとアンテナ部のブラスチック部品が外れるんじゃないかなって感覚です。まぁその前に液晶が割れそうですが。
TECLAST製品で似たような報告も見かけないので、部品の精度が悪いというよりは、組み立ての時に固定が甘かったんじゃないかなぁと。
さすがに開けてみるわけにはいかないので確認はできませんし、意識してひねるくらいでないと明確には分からない程度ですが、ふとしたタイミングでギシリと音が鳴るのは不安に感じますね。
ディスプレイ
▲「iPlay 8T」と「ZenPhone 5」とのディスプレイ比較(すべて輝度は最大)。
ディスプレイの輝度はそこそこ高めで、やや青みがかっています。
▲輝度による違い
0%が思ったほど暗くなかったです。室内だと80%くらいがちょうどよく感じました。
▲色温度は設定可能
“Automatic Contrast”を選択した時のみ”Warm”、”Standard”、”Cool”の三段階から選べます。標準では”Standard”です。
個人的には”Warm”が一番自然な色合いに感じました。
カメラ
「M40SE」はフロント2MP(最大1600×1200)、リア5MP(最大2592×1944)のカメラが付いています。
▲フロントカメラでの撮影(1600×1200を800×600に縮小。ほかの補正はなし)。
左右逆になり粒度も粗いですが、コントラストがはっきりしています。
▲リアカメラでの撮影(2592×1944を800×600に縮小。ほかの補正はなし)。
フロントカメラより解像度は高くなっていますが、ベールがかかったように白い…
▲映りはいまいちですがカメラアプリはしっかりしていて、複数のモードや細かな設定に対応していました。
サウンド
「M40SE」は上部左右にステレオスピーカーが付いています。
横向きに持つことを想定した位置ですね。
音ははっきり言って、いいとは言えません。
まず、音量を最大にしてもそれほど大きな音にはならず、ストリーミングビデオなどを見るなら音量最大がちょうどいいくらいです。
そのため、少し音量を下げるだけで弱い音がフェードアウトしてしまいます。
小さなスピーカーなので低音はとことん弱く、和太鼓の重低音がトコトコとすごく軽い感じになります。
中高音は比較的マシですが、高音はキンキンシャカシャカしてこれもいまいち。声質によっては人の声も聞き取りづらくなります。
ステレオ感はしっかりしているのでゲームBGMを流す程度には使えますが、音を楽しむのは厳しいでしょう。
ゲーム
「iPlay 8T」では動かなかった「ウマ娘 プリティーダービー」は、チュートリアルのレース、レース後のライブも難なくクリア。
動作もぬるぬるで問題なくプレイできます。
「iPlay 8T」では”標準の中”が上限だった「PUBG」のクオリティも、「M40SE」では”HDの高“まで選択できるように。
カクついたりすることもなかったので何となく最後までプレイ。
画面が大きいので割とサクサクと当たりました。
バッテリー
「M40SE」のバッテリーは6000mAh、オンラインビデオ再生時で公称9時間となっています。
もう少し実践的な動作ということで、PCMarkのバッテリーテストを実施した結果が以下。
ディスプレイの輝度100%で5時間12分、輝度0%で13時間7分となりました。
やっぱり10.1インチという大型のディスプレイが電力食いの原因なようです。
充電は最大14W。
近年の急速充電には及びませんが、そこそこ高速に充電できています。
ベンチマーク
最後はベンチマークです。
比較対象は同じUNISOC製SoCを搭載する「iPlay 8T」、がじぇっとりっぷ的基準の「Nexus 7」を採用しました。
なお、「Antutu」はGoogle Playから削除されたので公式サイトのapkからインストールしています。
UNISOC T610の性能は非常に高く、旧世代のノートPC向けCPUと比べても遜色ないスコアを叩きだしています。
モデル | M40SE | iPlay 8T | Nexus 7(2013) | |
---|---|---|---|---|
SoC | T610 | SC9832E | APQ8064 | |
メモリ | 4GB | 3GB | 2GB | |
Antutu v8 | 192486 | 動作不可 | 動作不可 | |
CPU Prime | 39769 | 10650 | 12268 | |
GeekBench 4 | Single | 1766 | 652 | 682 |
Multi | 5615 | 1825 | 1833 | |
GeekBench 5 | Single | 365 | 104 | インストール不可 |
Multi | 1374 | 379 | インストール不可 | |
3DMark | Wild Life | 512 | 動作不可 | 動作不可 |
Sling Shot | 1719 | 動作不可 | 417 | |
IceStorm | 対象外 | 5552 | Max out | |
IceStorm EX | 対象外 | 2811 | 6884 | |
PCMark | work 2.0 | 7615 | 完走せず | 2716 |
work | 11433 | 4613 | 1913 | |
vision | 5482 | 1900 | 1833 | |
storage | 32961 | 11003 | 1259 | |
jetstream2 | 35.425 | 11.442 | 8.434 |
▲Antutuは公称18万点でしたが、19万点強のスコアが出ました。
スコアとしてはHelio P70よりちょっと上くらいですね。
UNISOC T618と比べるとGPUスコアが1万点低く、動作周波数の差が大きく表れています。
GeekBenchのスコアはかなり高め。
シングルスレッドスコアはやや低いものの、マルチスレッドスコアはなんと数年前の主力級であったCore i7-7200Uや、UMPCでおなじみのCore m3-8100Yを上回っていました。そりゃあキビキビ動くわけだ…
PCMarkは全テスト完走しました。
ただしストレージテストはリードが3000MB/sオーバーなのでメモリ上で完結している可能性が高く、ちょっと結果が怪しいです。
Android 10以降専用の”3DMark Wild Life”も動作。
その代わりに”Ice Storm”が無くなったので、スコア比較できるのが”Sling Shot”のみになっています。
ブラウザからのJavascriptテスト。
過去のベンチマークデータと比較すると、Celeron N4000よりちょっと低い程度です。
この辺りはブラウザごとのJavascriptエンジンも関わってくるので、CPU性能とイコールにはなりません。
まとめ
「M40SE」の記事執筆時点での価格(Banggood)は139.99ドル、日本円換算だと15,536円(+送料219円)です。価格はドル円のレートで日々変動します。
1万円を切る「iPlay 8T」(89.99ドル)の1.6倍弱くらいの価格になりますが、性能は3倍以上、ついでにストレージは4倍で画面はHD→FHDと、価格以上の差があります。
性能的にワンランク上が欲しければ「M40」(17,112円)がありますが、スコア差と価格差が同じくらいなのでコスパ的にはあまり変わりません。
オーディオジャックが必要なら「M40」くらいの感覚でいいと思います。
今回はキーボードは試せませんでしたが、キーボード付きのPC的な使い方をするのであれば「M40SE」ですね。
いっそ、Chromebook版が出てもいいんじゃないかなと思うくらいにはきびきび動いてくれました。
PC的な使い方ができるタブレット、あるいはまともにゲームができるだけの性能を持つ安価なタブレットを探しているのであれば、「M40SE」はおすすめです。
コメント
>> 10インチサイズのタブレットって、狭額ベゼルを見かけないのはなんででしょうね?
10インチとなると狭額のメリットがデザイン性くらいしかなく
使用上のデメリットの方が多くなるからです。
スマホと違って大型タブレットはベゼルを”掴む”ことでホールドさせて使用します。
液晶面に掌や指を引っ掛ける為、ある程度のベゼルがないと誤タッチの原因になります。
アクセサリメーカーから見ても、狭額の大型タブレットはケースが作り難いです。
狭額であるほどケース固定具のベゼルに掛けられるホールド域が少なくなり
タブレット本体の重量も相まって少しの衝撃で角が抜けたりします。
コメントありがとうございます。
確かにデメリットは多いですね!
SIMのサイズが分かりません。
Micro?
nano?
ここは重要な部分だと思いますけど。
コメントありがとうございます。
使えるのはnanoSIMですね。サイズを明記いたしました。。