2020年9月11日、ASUSはグラフィックモジュールの付属した小型デスクトップ「Mini PC PB60G」を発売いたしました。
発売に先立ち、ASUS様より試用機をお借りできましたので、その実力を試してみたいと思います。試用機をお貸しいただいたASUS様にはこの場をお借りして御礼申し上げます。
ASUS PB60G

CPU | Core i5-9400T |
---|---|
GPU | GeForce GTX 1650 |
メモリ | 8GB DDR4-2400 |
ストレージ | 256GB M.2 SSD+1TB HDD |
USB | Type-C(Gen1)×1 3.1 Gen2×3 3.1Gen1×1、2.0×2 |
映像出力 | HDMI×2、DVI×1 DisplayPort×3 |
wi-fi | 802.11ac+BT5.0 |
サイズ | 175×175×70.2mm |
重さ | 1.75kg |
GoodPoint
✔ サイズ性能比が抜群
✔ 意外とうるさくないファン
✔ 豊富なUSB
✔ デュアルストレージ
BadPoint
✖ Type-C映像出力不可
✖ 冷却が弱い
✖ 端子間距離が近い
外観
▲パッケージです。
中身が結構多めです。
ベアボーンでなく完成品なので、ドライバCDは入っていません。
▲紙類は6種類。
クイックスタートガイドは2種類あり、1つはマウス・キーボード・電源のつなぎ方、もうひとつはパッケージ内容と各部名称についてです。
記述は日本語/ドイツ語/インドネシア語の3ヵ国語でした。多分英語版は別に用意されているのでしょう。
▲電源アダプタは表面に逆ドット(文字の部分だけドットがない)で150Wの記載があります。
▲裏側には仕様と各種マーク
▲同梱のアクセサリー
左からWi-fiアンテナ、モジュール接続部のカバー、VESAマウンタ、スタンドです。
▲スタンドをつけるとこんな感じです。
▲ティッシュ箱と比較したサイズ感。
だいたい一辺が手のひらを広げたより少し小さいくらいの大きさです。
▲本体フロント部
一体化されたデザインがスタイリッシュです。Type-CはUSB3.1 Gen1(≒USB3.0)なので、映像出力はできません(実際に試しましたが出力されませんでした)。
一方で吸気口が小さい点が気になります。
▲本体背面
以前にレビューした「PB50」とは配置が異なっています。

なお、上の本体はUHD 630とGTX 1650どちらの出力も可能ですが、下のグラフィックモジュールからはGTX 1650の出力しかできません。
▲左側面
上下のモジュールをつないでいます。右側面は何もありません。
▲天面はすっきりしています。
▲底面には各種マーク
軽く分解
メモリや機器の増設や交換による問題についてはサポートの対象外となります。また、工場出荷時のSSDやHDDの構成を変更された場合の動作保証は出来ませんので、あらかじめご了承ください。尚、修理等をご依頼される場合は、工場出荷時の状態にメモリや機器を戻していただく必要があります。
▲本体上部はネジ一本外せば開けられます。
内部構造は「PB50」とほぼ同じですね。
▲フロント部
▲SATA HDDはリボンケーブルで接続されています。
乱暴に扱うと千切れそうで結構怖いです。
▲上下を分離
接続は単純な仕組みです。
▲接続部のアップ
「PB50」で詳しく見ましたが、PCIe x8そのままですね。
本当はこの後グラフィックモジュールを見ようとしたのですが、爪が固く壊しそうだったので諦めました。
システム
▲ASUSのBIOS画面はUEFIでグラフィカルです。
内容的には旧来のBIOS画面を踏襲しており、操作に迷うことは少ないです。
▲恒例のバックアップです。
使用したのは「Macrium Refrect Free」で、バックアップサイズは27.79GBでした。
▲デスクトップはシンプル
▲システム情報です。
▲CPUは6コア6スレッド
がじぇっとりっぷのレビューはノート中心なので、6コアというだけでワクワクします。
▲起動直後のメモリ使用量は2.1GBと控えめ
▲スタートアップも特に余計なもの入っていません。
▲HWiNFOで見るCPU情報
▲dGPUであるGeForce GTX 1650の情報
グラフィックカードのGTX 1650はGDDR6版に移行していますが、こちらはまだGDDR5版のようです。
▲マザーボード情報
チップセットはIntel B360を使用、PCIeはx4+x8+x16となっています。
M.2 SSDがx4、グラフィックモジュールがx8を使っています。x16はどこへ…?
▲ストレージ情報です。
SSDはSAMSUNG製、HDDはSeagate製ですね。
▲SSDのベンチマーク
リード3,500MB/s、ライト1,500MB/sとリード編重ですが、困ることのない速度が出ています。
▲HDDのベンチマーク
リード・ライトともに170MB/s超えはHDDとしては素晴らしいですが、4Kランダムのスコアが…
M.2の容量が足りないという方は2.5インチSSDに換装した方がいいかもしれません(もしくはM.2 SSDの容量を増やすか)。
ちょっと使ってみた
レビュー中、「PB60G」を机の上に置いて使っていたのですが、うるさいと感じることがありませんでした。
いや、それなりに音は出ているのですが、中低音くらいの耳につきにくい音なので、あまり気にならないという言い方が正しいですね。
HWMonitorで見てみると、普段は2000RPMくらいで回っており、どれだけぶん回しても3600RPMと低めの数値に収まっています。
それでいて動作はキビキビなので、使っていて楽しかったです。
気になったのは吸気口・排気口の小ささです。
上記画像はフルロード後のもので、CPUは88℃と90℃にも届きませんが、チップセットがかなり高温です。
「PB60G」は「PB50」と違ってサイドのコネクタ部がふさがっています。そのため本体側の吸気が足りていないのか、背後を触っても風の流れが少なく、本体自体の発熱が大きいように感じました。
他に、ちょっとした問題も発生しました。
これは個体差なのか相性なのかは分かりませんが、グラフィックモジュール側のHDMIを使っていた時に、ブラックアウトする現象が発生しました。
あくまで推測ですが、発生すると思われる条件は以下。
・4Kモニタ(PHILIPS「272P」)をFHD解像度で使用
・DirectX9を使用するアプリをフルスクリーンで使う
これによって、グラフィックモジュール側HDMIを使用してのDQベンチマークと3DMarkのIce Stormがブラックアウトしました。
元がFHD解像度のLepow「Z1」では発生しなかったため、上記条件を満たした場合に発生するものと思われますが、他に4Kモニタを所持していないため、これ以上の検証はできませんでした。
まぁもっとも、「Ice Storm」「Cloud Gate」は2020年1月に開発元のFuturemarkのサポートが終了しているので、どうこうは言えないのですが…
もう一点、こちらは不具合ではないのですが、もうちょっと何とかならないかなぁと思ったのが、端子の間隔です。
フロント側にUSBメモリを並べて刺すと、隙間がありません。使ったUSBメモリは比較的細身なので並べて刺すことができましたが、もうちょっとごつい(太い)ものだと片方が使えなくなるでしょう。
リア側も同じです。
DisplayPort、USB、HDMIと使いにくそうな並びだなぁと思っていましたが案の定でした。
うまく刺さっているように見えますが実は結構無理して刺していて、よく見ると手前側に広がっています。
映像出力は他にもあるので必ずしも間のUSBが死にポートとなるわけではありませんが、もうちょっと隙間を取れなかったのかなぁと。
USB端子が多いのはありがたいですが、すべてを同時に使おうとすると、工夫が必要そうです。
ベンチマーク
対象アプリ一覧
PassMark 9.0
CPU-Z
Geekbench 4.4.2
Geekbench 5.0.1
CrystalMark 2004R7 v0.9.200.452
CINEBENCH R15.0
CINEBENCH R20
PCMark 10
3D Mark v2.0.6762
DQ X ベンチマーク v1.51
FF XIV 紅蓮の解放者
FF XIV 漆黒の反逆者
FF XV v1.2
MonsterHunter Frontier 大討伐
jetstream 2
BaseMark
WebXPRT
MotionMark
SpeedMeter2.0
octane
※ベンチマーク条件
■ ゲーム
DQ Xは1280×720・標準、および1920×1080・最高品質の2種類
FF XIV(紅蓮/漆黒)、は1280×720・高品質(ノート)、および1920×1080・最高品質の2種類
FF XVは1280×720・標準)、および1920×1080・高品質の2種類
■ 騒音
対象機材の端から30cmの位置
結果総覧
GeForce GTX 1650は以前にLenovo「IdeaPad S540 Gaming」でレビューしています。

「PB60G」は内部接続がPCIe x8なので少しスコアが落ちるかなと予想していたのですが、実際は同等かそれより少しいいスコアとなりました。
CPU
デスクトップ向けCPUはほとんど扱っていないので比較対象が少ないのですが、最近の4コア8スレッドCPUとほとんど変わらないスコアとなっています。
Core i5-9400TはTDPが35Wと低めなので、モバイル向け(特にHシリーズ)と大して変わらないスコアというのは納得がいくところですが。
これがTDP65WのCore i5-9400だったらもっとスコアは伸びていたことでしょう。
GPU
グラフィックベンチマークのスコアはPCIe x8接続であることが響いているのか、平均より低くなっていますが、モバイル向けのGTX 1650 Max-Qよりはかなり高いスコアを出しています。
GTX 1650 Max-Qのはずの「IdeaPad S540 Gaming」が微妙に高いんですよね…
CPU内蔵グラフィックであるUHD 630は大雑把にGTX 1650の1/8といったところですね。

軽量級であるDQベンチマークはどれだけ高性能でも2万前後でスコアが頭打ちとなります。
その前提で見ると、GeForce GTX 1650はFHD画質でも快適にプレイできることが分かります。

中量級であるFF XIVでも、FHD画質・最高品質で”非常に快適”となっています。

重量級であるFF XVでは、内蔵のUHD 630では720pでもまともに動かないのに対し、GTX 1650はFHD画質・高品質でも”普通”の評価を出しています。
実際のベンチマーク中の画面を見ても、キャラクターの動きは滑らかですが背景のテクスチャの書き換えが時折ラグっている感じでした。
プレイそのものには大きく影響しないと思います。
消費電力・騒音について
アイドル時 | 19.4W |
---|---|
画面オフ時 | 17.4W |
CINEBENCH(S) | 34.7W |
CINEBENCH(M) | 68.8W |
最大 | 133W |
「PB60G」はTDP35WのCore i5-9400Tと最大75WのGeForce GTX 1650の組み合わせということもあって、最大消費電力は133Wと結構高くなっています。
ノートPCと比較するのは間違っていそうですが、「IdeaPad S540 Gaming」が最大でも82.8Wだったことを考えると、ワットパフォーマンスでは劣っていますね。
騒音(静音) | 36.0dB |
---|---|
騒音(アイドル) | 37.1dB |
騒音(最大) | 49.6dB |
騒音レベル[dB] | 音の大きさのめやす | 自室内の聞き騒音 | ||
---|---|---|---|---|
うるさい | 70 | 掃除機 騒々しい街頭 | うるさい | 非常にうるさい |
60 | 普通の会話・チャイム 時速40キロの自動車の内部 | 非常に大きく聞こえうるさい 声を大きくすれば会話ができる | ||
普通 | 50 | エアコンの室外機 静かな事務所 | 日常生活で 望ましい範囲 | 大きく聞こえる 通常の会話は可能 |
40 | 深夜の市内 図書館 | 多少大きく聞こえる 通常の会話は十分に可能 | ||
静か | 30 | ささやき声 深夜の郊外 | 静か | 非常に小さく聞こえる |
20 | ささやき 木の葉のふれあう音 | ほとんど聞こえない |
騒音については最大で49.6dBとそこそこ大きな数字となっていますが、前述のとおり中低音くらいの耳につかない音なので、あまり気になりません。
例えるならUSB扇風機の音くらいでしょうか。
まとめ
がじぇっとりっぷで「PB60G」の記事を書いたのが約1年半前です。

当時はグラフィックモジュールは「Quadro P620」または「Quadro P1000」となっていたので、お話をいただいたときにどうやってベンチマークを計ろうかと頭を抱えていたのですが、届いてみれば「GeForce GTX 1650」を搭載した、一般ユーザーの買いやすい構成になっていました。
グラフィック性能も良好で、このサイズで中量級ゲームができるというのは他にないでしょう。
Intelの出した「Ghost Canyon」でさえ、238×216×96mmと一回り大きいサイズです(もっとも「Ghost Canyon」はもっと上のGeForce RTX 2070も搭載できますが)。
そんな「PB60G」の価格は定価149,800円のようですが、Amazonでは134,820円となっています(※記事執筆時点)。
メモリ・ストレージ・OS込みの完成品なので、こんなものでしょう。
ノートPCだとGTX 1650機はもっと安いのがありますが、端子の豊富さを考えると、これはこれでアリです。最大6台のマルチディスプレーなんて、ノートPCでは無理ですもんね。
そう考えると、株式やデザインなどマルチディスプレー必須な環境で使うのもいいかもしれません。
関連リンク
付録
ベンチマーク結果一覧
メーカー | ASUS | ||
---|---|---|---|
モデル名 | PB60G | ||
CPU | Core i5-9400T | ||
GPU | GeForce GTX 1650 | UHD 630 | |
メモリ | 8GB | ||
ストレージ | 256GB | ||
PassMark | Total | 4757.9 | 3449.2 |
CPU Single | 2062 | 2039 | |
CPU Multi | 9564.6 | 9605.9 | |
2D | 720.1 | 657.1 | |
3D | 7742.2 | 965.3 | |
Memory | 2154.5 | 2160.8 | |
Disk | 17105.2 | 17255.6 | |
CPU-Z | Single | 383.3 | – |
Multi | 2097.2 | – | |
GeekBench4 | Single | 4228 | – |
Multi | 15323 | – | |
OpenCL | 19029 | – | |
OpenCL(dGPU) | 120029 | – | |
GeekBench5 | Single | 945 | – |
Multi | 3874 | – | |
OpenCL | 5205 | – | |
OpenCL(dGPU) | 37654 | – | |
CrystalMark | Mark | 358837 | 334013 |
ALU | 100974 | 102805 | |
FPU | 65988 | 66758 | |
MEM | 61877 | 66787 | |
HDD | 58845 | 52274 | |
GDI | 18323 | 15520 | |
D2D | 18261 | 552 | |
OGL | 34569 | 24717 | |
CINEBENCH R15 | OpenGL | 103.83fps | 45.52fps |
CPU(M) | 776cd | 762cd | |
CPU(S) | 148cd | 147cd | |
CINEBENCH R20 | CPU(M) | 1760pts | – |
CPU(S) | 347pts | – | |
PCMark | ALL | 4458 | 3545 |
Essensial | 7492 | 7511 | |
Productivity | 5823 | 5820 | |
DigitalContent | 5513 | 2767 | |
3DMark | TimeSpy | 3409 | 399 |
Graphics | 3311 | 346 | |
CPU | 4096 | 3038 | |
FireStrike | 7553 | 978 | |
Graphics | 8726 | 1046 | |
Phisics | 9799 | 9427 | |
Combined | 3212 | 346 | |
NightRaid | 25114 | 4868 | |
Grapihics | 41102 | 4631 | |
CPU | 7838 | 6868 | |
SkyDiver | 21042 | 4189 | |
Graphic | 28772 | 3817 | |
Phisics | 9418 | 8529 | |
Combined | 18090 | 4061 | |
CloudGate | 20632 | 7858 | |
Graphics | 55519 | 8473 | |
Phisics | 6449 | 6267 | |
IceStorm | 143266 | 55259 | |
Graphics | 258670 | 55584 | |
Phisics | 55931 | 54151 | |
IceStormEX | 132872 | 39075 | |
Graphics | 218033 | 36192 | |
Phisics | 56134 | 54186 | |
IceStormUnlimited | 156471 | 78281 | |
Graphics | 315686 | 87203 | |
Phisics | 56586 | 57641 | |
DQ(DX9) | 1280・標準 | 18328 すごく快適 | 8078 とても快適 |
1920・最高 | 18519 すごく快適 | 4156 普通 | |
FF XIV(DX11) 紅蓮 | 1280・標準 | 13479 非常に快適 | 2544 やや快適 |
1920・最高 | 8335 非常に快適 | 880 動作困難 | |
FF XIV(DX11) 漆黒の反逆者 | 1280・標準 | 13374 非常に快適 | 2494 普通 |
1920・最高 | 8672 非常に快適 | 860 動作困難 | |
FF XV(DX11) | 1280・標準 | 7213 快適 | 555 動作困難 |
1920・最高 | 3514 普通 | 測定不可 | |
MHF(DX10) 大討伐 | 1280 | 30292 | 4133 |
1920 | 16517 | 1964 | |
ブラウザ | jetstream2 | 111.429 | – |
BaseMark | 584.64 | – | |
WebXPRT | 169 | – | |
MotionMark | 283.36 | – | |
SpeedMeter2.0 | 83.46 | – | |
octane | 37773 | – |
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