GEEKOM「A5」はRyzen 7 5800Hを搭載した、GEEKOM 20周年記念モデルのミニPCです。

機材を提供いただいたGEEKOM様にはこの場をお借りして御礼申し上げます。
当ブログの方針として、悪い点も包み隠さず書いていきます。
GEEKOM A5

■ GEEKOM A5 | |
CPU | Ryzen 7 5800H |
---|---|
メモリ | 32GB DDR4-3200 |
ストレージ | 512GB NVMe SSD |
インターフェース | USB Type-C(Gen2)×2 USB3.2 Gen2×3 USB2.0×1 HDMI 2.0b×2 2.5GbE 有線LAN SDXCカードリーダー オーディオジャック |
wi-fi | Wi-fi 6+BT5.2 |
サイズ | 117×112×49.2mm |
重さ | 652g |
GoodPoint
✔ 思ったよりパフォーマンスがいい
✔ 低負荷時はとても静か
✔ クアッドディスプレイ対応
BadPoint
✖ ファンが全開になりやすい
✖ グラフィックが旧世代Vegaアーキテクチャ
✖ 他社より価格がやや高め
パッケージ
・電源アダプタ
・電源ケーブル
・VESAマウンタ
・マニュアル
・サンキューカード
・ねじ類
技適番号は箱と本体の両方に記載されています。
参考 技術基準適合証明等を受けた機器の検索 (217-230869):総務省
技適の認証からすると、「A5」から始まり「A9」まで型番が存在するようです。
今のところ「A5」以外は全く情報がありませんが、今後登場するかもしれませんね。
「A5」のインターフェース
・USB3.2 Gen2×2
・オーディオジャック
・電源ボタン
■左サイド
・SDXCカードリーダー
・DCジャック
・USB3.2 Gen2(Type-C)×2
・HDMI×2
・2.5GbE 有線LAN
・USB3.2 Gen2×1
・USB2.0×2
「A5」の内部
内部には底面からアクセスでき、ストレージとメモリを換装することができます。
「A5」のパフォーマンス
「A5」の搭載CPUはRyzen 7 5800Hで8コア16スレッドです。
評価の前に。
「A5」の立ち位置は、実売5万円台(記事執筆時点)の、2023年現在ではミドルクラスに位置づけられるミニPCです。
10万円前後のハイエンドクラスとは求められているものが違うという点に留意する必要があります。
総合
PassMarkは旧バージョン(v9.0)と新バージョン(v10.1、V11.0)を掲載。比較グラフは過去データの揃っているv9を使用しています。
TDPの違いがあるとはいえ、CPU性能はRyzen 7 6800Uを上回っています(シングルスレッドは下ですが…)。
また、PassMark公式スコア(V10基準)(マルチ:21171、シングル:3061)と比較すると、本機はマルチ:22502、シングル:3231で、平均を5%ほど上回っています。
なのでCPUのポテンシャルはおおむね引き出せているとみていいでしょう。
CPU


上段:マルチスレッド、下段:シングルスレッド
CINEBENCHはR15ではRyzen 7 6800Uを上回ったものの、R23では逆転されています。
TDP45Wと15Wが同程度なわけですが、Ryzen 7 5800Hは電力効率化が進んでいない旧世代アーキテクチャ(Zen3)なので、Zen3+アーキテクチャ(製造プロセス変更(7nm→6nm)と省電力化が主な変更ポイント)に追いつかれているのは仕方ないのかなと。
まぁ、絶対性能でいえば日常用途に十分すぎるスコアですし、高TDPとはいえ1日に占める高負荷の時間を考えれば、電気代も月に100円と変わらないかと。
GPU


グラフィックは2017年から続くVegaアーキテクチャ。
毎年改良を重ねて、モバイル内蔵GPUとしては一線級の性能は維持してきましたが、新アーキテクチャのRDNA2・RDNA3やIntelのIris Xe-LPと比べると見劣りします。
ここだけは、はっきりとRyzen 7 5800Hのネックと言えますね。
ストレージ
ストレージにはLexar NM620の512GBモデルを使用。
もともとGen3 SSDで、リード3,500MB/s、ライト3,100MB/sはGen3 SSDの限界付近の速度です。
Gen4 SSDに換装するという手もありますが、このくらいの速度があればよほど重いアプリを使うとかでなければ、体感できるほどの変化は少ないでしょう。
SDカード
SDカードはフルサイズのカードリーダーを内蔵。
SanDisk Extreme Pro(128GB)を使ったベンチマークでもリード95MB/s、ライト88MB/sと十分な速度が出ています。カメラなどSDカードを使う層にはありがたいですね。
外観
パッケージ
外箱は「Mini IT11」とは違ってシンプル。個人的には嫌いではありません。

底面だけポップカラー。
パッケージ一覧。
本体のコンパクトさに比べて、電源アダプタがかなり大きめです。
付属品
マニュアルは大きな1枚モノ。
内部へのアクセスの仕方などが分かりやすく書かれています。
マニュアルの日本語はいわゆる中華フォントが使われています。
「放置すると世界的にこれが”正しい日本語の漢字”と思われるようになる」という意見を見てからは、指摘することにしています。
VESAマウンタとHDMIケーブル、ネジ類。
VESAマウンタは75mm/100mm兼用のシンプルなものです。
電源アダプタはアース付きの3ピンコネクタ。
出力は最大120Wです。
サンキューメッセージカード。
筐体
前後左右のインターフェース。
左右は大きく吸気口となっています。
Ryzen 5000シリーズはUSB4はネイティブ対応していないため、Type-CはどちらもUSB3.2 Gen2(10Gbps)となっています。
両ポートとも映像出力に対応していて、デュアルHDMIと合わせてクアッドディスプレイができます。
本体カラーは日本語サイトでは桜色とされていますが、グローバルサイトではローズゴールドになっています。
がじぇっとりっぷもこれは桜色ではなくローズゴールドだと思います。
同時にレビューしている「Mini IT13」とは色違い…と見せかけて、吸気口のデザインが違っています。
重さは本体554.5g、電源アダプタが666.5g。電源アダプタの方が重いのか…
内部構造
底面です。
箱と同様、技適番号もきっちり掲載されています。
再掲ですが内部全体。
内部はメタルフレームで囲われ、耐久性は抜群。またメタルフレームは電磁波干渉を抑える役割も持っています。
隙間もそこそこにありますし、サイドの吸気口が大きく開いているので、ストレージ・メモリ面の冷却もそう問題にはならないでしょう。
前述の通り、ストレージはLexar NM620。
地味に2280+2242+2.5インチのトリプルストレージに対応しています。
Wi-fiは2280 SSDの下にあり、左上に白と黒のアンテナコードが見えています。
メモリは…これどこだ?
WODPOSITという深センのメーカーで、「MiniAir 11」や「Mini IT8」、他メーカーだとGMKtecなどで採用事例があるようです。
参考 メーカーサイト:WODPOSIT
底蓋に2.5インチベイ。
フレームはM.2 SSDの放熱板を兼ねていて、SSDとつながるサーマルパッドがくっついているのが分かります。
システム
起動前
ESCでUEFI、F7で起動順序選択に入ります。
UEFIは旧BIOSスタイルで、設定可能項目は結構多め。
恒例のバックアップです。
使用したのは「Macrium Refrect Free」で、バックアップサイズは30.27GBでした。
システム情報
デスクトップは素のWindows。
システム情報。
OSはWindows 11 Proでした。
ストレージ情報。
HWiNFO。
HWiNFOで見るCPU詳細。
電力制限は短時間(PL2)が60Wで、長時間(PL1)が42Wに設定されています。
ゲームベンチマーク
レビュー機のスペック
レビュー機のスペックは以下の通り。
CPU | Ryzen 7 5800H |
---|---|
グラフィック | Vega 8 |
メモリ | 32GB(16GB×2) |
ストレージ | 512GB |
※軽量級のDQベンチマークはグラフィック性能の向上により、本来の性能とスコアが一致しなくなったため、比較から外しています(計測はしているので末尾のスコア一覧には掲載しています)。
[中量級] FF XIV 暁月の終焉
今回より、漆黒の反逆者(ヴィランズ)から、暁月の終焉に変更しています。

設定 | スコア | 平均FPS | 評価 |
---|---|---|---|
1920×1080 最高品質 | 3723 | 25.55 fps | 設定変更 |
1920×1080 高品質 | 5022 | 34.62 fps | 普通 |
1920×1080 標準 | 6607 | 45.8 fps | やや快適 |
1280×720 高品質 | 8627 | 61.02 fps | 快適 |
1280×720 標準 | 10307 | 74.25 fps | 快適 |
中量級のFF14では、快適には一歩届かない感じです。
画質を落としてもFHD解像度では45.8FPS、最低FPSは23と、人によっては気になるレベル。まぁ、平均30FPSは超えているのでプレイ自体はできそうですが。
[重量級] FF XV Windowsエディション

設定 | スコア | 評価 |
---|---|---|
1920×1080 高品質 | 1590 | 動作困難 |
1920×1080 標準品質 | 2257 | 重い |
1920×1080 軽量品質 | 2894 | やや重い |
1280×720 標準品質 | 3644 | 普通 |
1280×720 軽量品質 | 4464 | 普通 |
重量級のFF15は意外と頑張っていて、Core i7-13700H以上Core i9-13900Hに。
メモリ32GBが効いているのか、重い設定ほど悪くないスコアとなっています。
それでも新アーキテクチャ(RDNA2/RDNA3)には遠く及ばないわけですが。
消費電力・稼働時間・騒音・温度
消費電力
アイドル時 | 6.6W |
---|---|
画面オフ時 | 6.0W |
スリープ時 | 3.4W |
CINEBENCH(S) | 31.3W |
CINEBENCH(M) | 69.8W |
最大 | 91.4W(瞬間) 60.0W(長期) |
「A5」の消費電力は意外と大人しめで、瞬間的にも100Wを超えることはありませんでした。
モバイルディスプレイなど、電気を食うデバイスを接続すると105W程度まで上がるので、120Wアダプタはちょうどいいと言えそうです。
Core i7-13700Hなんかは本体単独でも瞬間で120W、長期でもほぼ100Wだったことを考えると、「A5」のワットパフォーマンスはかなり高いと言えます。

騒音
状況 | 音量 | 聞こえ方 |
---|---|---|
電源オフ | 34.8dB | |
アイドル | 35.2dB | 耳を近付けると聞こえる |
最大 | 48.4dB(※) | はっきりとうるさい |
最大(背面) | 48.8dB |
騒音レベル[dB] | 音の大きさのめやす | 自室内の聞き騒音 | |
---|---|---|---|
うるさい | 70 | 掃除機 騒々しい街頭 | 非常にうるさい |
60 | 普通の会話・チャイム 時速40キロの自動車の内部 | 非常に大きく聞こえうるさい 声を大きくすれば会話ができる | |
普通 | 50 | エアコンの室外機 静かな事務所 | 大きく聞こえる 通常の会話は可能 |
40 | 深夜の市内 図書館 | 多少大きく聞こえる 通常の会話は十分に可能 | |
静か | 30 | ささやき声 深夜の郊外 | 非常に小さく聞こえる |
20 | ささやき 木の葉のふれあう音 | ほとんど聞こえない |
※本体から30cmという近距離で計測しているため、メーカー公称より数値が大きくなっています。
ファン騒音は割とうるさめ。
ファンの制御は、一応数段階あり、ネットサーフィンやYouTubeの1080p再生程度ではページ読み込み時や次の動画に移るときにに低速で、再生中は極低速。
極低速時は50cmも離れればファン音が聞こえないので動画視聴の邪魔にはなりません。この点はグッド。
一方で全開となる閾値が低く、重めのアプリを起動するだけでも全開となります。ここはもっとゆっくりの変化でもいいんじゃないかなぁと思ってしまいます。
早い段階から冷やしているからか、ベンチマーク終了後は10秒かからずに極低速からファン停止まで温度が下がります。
マイルドさに欠ける制御なので、例えば複数のアプリを次々と計測するPCMarkではファン全開とファン停止を繰り返し、かなり気になるものとなります。
温度
温度は負荷をかけると最大ジャンクション温度である100度に到達しています。
これを見ると、ファンが瞬間的に全開になってしまうのも納得してしまいます。TDP45Wという高TDPだからこそなのかもしれません。
まとめ
「A5」の価格は78,688円。記事執筆現在は18,888円オフクーポンで59,800円となっています。
ファン制御がピーキーではありますが性能自体は悪くなく、ミドルクラスのミニPCとしては十分でした。
問題があるとすれば…Ryzen 7 5800H搭載ミニPCは他社からも出ていて、それらが「A5」に比べてかなり安いということでしょうか。
「A5」のポイントはメタルフレームや2.5GbE、デュアルType-Cなどハイエンド要素をミドルクラスに持ち込んでいる点にあります。
そこを正しく評価されれば、他社より高い価格にも納得してもらえるのでしょうが…このクラスを求めるユーザーは価格という絶対要素を優先しがちだからなぁ…
関連リンク
付録
ベンチマーク結果一覧
メーカー | GEEKOM | |
---|---|---|
モデル名 | A5 | |
CPU | Ryzen 7 5800H | |
GPU | Vega | |
メモリ | 16GB×2 | |
ストレージ | 512GB | |
PassMark 9 | Total | 5205.8 |
CPU Single | 3075 | |
CPU Multi | 21630 | |
2D | 729.7 | |
3D | 3256.2 | |
Memory | 2140.7 | |
Disk | 23708.4 | |
PassMark 10 | Total | 5689.1 |
CPU Single | 3231 | |
CPU | 22502.4 | |
2D | 750.5 | |
3D | 3023.8 | |
Memory | 2959.6 | |
Disk | 24589.3 | |
PassMark 11 | Total | 4566.2 |
CPU Single | 3169 | |
CPU Multi | 22061.1 | |
2D | 752.8 | |
3D | 3185.6 | |
Memory | 2954.4 | |
Disk | 21288 | |
3DMark | TimeSpy | 1668 |
Graphics | 1461 | |
CPU | 8480 | |
FireStrike | 4161 | |
Graphics | 4636 | |
Phisics | 22299 | |
Combined | 1393 | |
NightRaid | 17586 | |
Grapihics | 19119 | |
CPU | 12094 | |
SkyDiver | 15355 | |
Graphic | 14935 | |
Phisics | 18641 | |
Combined | 14581 | |
CloudGate | 27732 | |
Graphics | 34344 | |
Phisics | 16568 | |
IceStorm | 173661 | |
Graphics | 268118 | |
Phisics | 77769 | |
IceStormEX | 132159 | |
Graphics | 164843 | |
Phisics | 78019 | |
IceStormUnlimited | 195125 | |
Graphics | 312874 | |
Phisics | 84207 | |
3DMark | TimeSpy | 1668 |
Graphics | 1461 | |
CPU | 8569 | |
FireStrike | 4169 | |
Graphics | 4648 | |
Phisics | 22727 | |
Combined | 1391 | |
NightRaid | 17612 | |
Grapihics | 19062 | |
CPU | 12309 | |
CINEBENCH R15 | OpenGL | 132.60fps |
CPU(M) | 1865cb | |
CPU(S) | 233cb | |
CINEBENCH R20 | CPU(M) | 4267pts |
CPU(S) | 556pts | |
CINEBENCH R23 | CPU(M) | 10388pts |
CPU(S) | 1432pts | |
CPU-Z | Single | 567.4 |
Multi | 5212.5 | |
CrystalMark | Mark | 754629 |
ALU | 319576 | |
FPU | 151087 | |
MEM | 156353 | |
HDD | 80122 | |
GDI | 18531 | |
D2D | 8139 | |
OGL | 20821 | |
GeekBench4 | Single | 6378 |
Multi | 35028 | |
OpenCL | 56524 | |
OpenCL(dGPU) | – | |
GeekBench5 | Single | 1461 |
Multi | 8676 | |
OpenCL | 16920 | |
OpenCL(dGPU) | – | |
GeekBench6 | Single | 2022 |
Multi | 9421 | |
OpenCL | 17666 | |
OpenCL(dGPU) | – | |
PCMark | ALL | 6464 |
Essensial | 11053 | |
Productivity | 9754 | |
DigitalContent | 6798 | |
VR Mark | 2287 | |
DQ(DX9) | 1920・最高 | 13796 すごく快適 |
1280・標準 | 20932 すごく快適 | |
FF XIV(DX11) 紅蓮 | 1920・最高 | 3629 とても快適 |
1920・高 | 5046 快適 | |
1920・標準 | 6313 とても快適 | |
1280・高 | 8717 非常に快適 | |
1280・標準 | 10366 非常に快適 | |
FF XIV(DX11) 漆黒の反逆者 | 1920・最高 | 3650 とても快適 |
1920・高 | 4890 快適 | |
1920・標準 | 6313 とても快適 | |
1280・高 | 8255 非常に快適 | |
1280・標準 | 9625 非常に快適 | |
FF XIV(DX11) 暁月の終焉 | 1920・最高 | 3723 設定変更 |
1920・高 | 5022 普通 | |
1920・標準 | 6607 やや快適 | |
1280・高 | 8627 快適 | |
1280・標準 | 10307 快適 | |
FF XV(DX11) | 1920・高 | 1590 動作困難 |
1920・標準 | 2257 重い | |
1920・軽量 | 2894 やや重い | |
1280・標準 | 3644 普通 | |
1280・軽量 | 4464 普通 | |
MHF(DX10) 大討伐 | 1920 | 8098 |
1280 | 14955 | |
Blue Protocol (DX12・1920) | 最高画質 | 2499 動作困難 |
中画質 | 4066 設定変更 | |
低画質 | 8162 快適 | |
ブラウザ | jetstream2 | 252.373 |
BaseMark | 1182.2 | |
WebXPRT3 | – | |
WebXPRT4 | 272 | |
MotionMark | 1703.5 | |
SpeedMeter2.0 | 268.3 | |
octane | 73609 |
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