2023年11月20日、SBCメーカーのFriendlyELECはRockchip RK3588を搭載したSoMとボードのセット「CM3588」を発売しました。
スペック
■ CM3588 | |
CPU | Rockchip RK3588 |
---|---|
メモリ | 4~16GB LPDDR4X-2133 |
ストレージ | 0/64GB eMMC |
インターフェース | USB Type-C(3.0)×1 USB 3.0×2 USB 2.0×1 HDMI×2 HDMI-In microSDXC 2.5GbE 有線LAN オーディオジャック |
wi-fi | なし |
サイズ | 160×116×20mm |
特徴
FriendlyELECは「NanoPi」および「NanoPC」をメインとしていますが、SOM(System on Module)も出しています。
「CM3588」はSoC、メモリ、ストレージだけの、いわゆるCompute Moduleであり、ドーターボード/キャリアボードとセットで運用することが前提となっています。
SoC
「CM3588」のSoCはRockchip RK3588。最近増えてきたRK3588Sではなく、無印の方のRK3588です。
最近だと「Orange Pi 5 Plus」や「NanoPC-T6」などに搭載されています。
ブロックダイアグラムはこんな感じ。
地味にHDMI-IN (HDMI RX)をサポートしています。
GeekBenchスコアはこんな感じ。
SBC界隈で主流のRK3399のざっと3倍、PC向けと比較するとシングル・マルチ性能ともにCeleron N5105と同等程度です。
なお、弟分のRK3588Sと比較すると、違いは以下のようになっています。
RK3588S | RK3588 | |
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CPU | Cortex A76 ×4 Cortex A55 ×4 | |
GPU | Mali-G610 MP4 | |
NPU | 6TOPS | |
メモリ | LPDDR4x/LPDDR4/LPDDR5 最大32GB | |
映像出力 | HDMI 2.1/eDP ×1 DisplayPort ×1 MIPI DSI ×2 | HDMI 2.1/eDP ×2 DisplayPort ×2 MIPI DSI ×2 |
映像入力 | 48MP ISP MIPI CSI 4×2lane DVP | 48MP ISP MIPI CSI 4×2lane DVP HDMI-IN (4K/60Hz) |
ネットワーク | 1GbE ×1 | 1GbE ×2 |
USB | USB3.1 Gen1(OTG) ×1 USB3.1 Gen1(HOST) ×1 USB2.0 (HOST) ×2 | USB3.1 Gen1(OTG) ×2 USB3.1 Gen1(HOST) ×1 USB2.0 (OTG) ×2 |
PCIe | – | PCIe 3.0 x4 |
Combo PIPE | 2ポート | 3ポート |
低速I/O | SPI ×5 I2C ×9 UART/GPIO ×10 12bit ADC CAN bus ×3 | SPI ×5 I2C ×9 UART/GPIO ×10 12bit ADC |
サイズ | 17×17mm | 21.45×21.45mm |
RK3588Sは、CPU/GPU/NPU構成はRK3588と同じで、インターフェース周りが簡素化された分、パッケージサイズが小型化しています。
そのため、もともと搭載できるインターフェースの限られる、クレカサイズSBCに採用されやすいという側面があります。
参考 RK3588 データシート:CNX Software ※PDF
参考 RK3588S データシート:CNS Software ※PDF
メモリとストレージ
メモリは4GBから16GBのLPDDR4X-2133。32GBは用意されないようです。
ストレージはメモリと連動していて、4GBの場合はなし(0GB)、8GBと16GBでは64GB eMMC(HS400モード)が搭載されます。
SoM自体には拡張要素はありませんが、キャリアボードによって拡張要素は異なります。
その他
無線LANは非対応。どうしても使いたい場合はUSBアダプタを使うことになります。
有線LANは2.5GbE。チップはRTL8125Bで、これはSoM上に実装されているのでキャリアボードを問わず使うことができます(キャリアボード上にLANポートが用意されていれば、ですが)。
キャリアボードとの接続は、DF40C-100DP-0.4V(51)という、0.4mmピッチの100ピンコネクタを4つ使います。
Raspberry Pi Compute Module 4が使っているものと同じ規格です(CM4は2ソケットですが)。
SoMの世界では長らくメモリのように差し込む204ピンソケットや260ピンソケットなどが使われてきましたが、最近では徐々にプラグタイプも増えてきています。
外観
SoMです。
RK3588を中心にメモリとeMMC、電力管理チップ(RK806-1)、2.5GbEチップ(RTL8125B)が配置され、背面には消費電力6.5mW以下という超省電力のDAC/ADCであるオーディオCODECチップ(ALC5616)が実装されています。
キャリアボードは160×116mmとやや大柄ですが…クアッドM.2 SSDスロットがめちゃくちゃ主張しています。
RK3588はPCIe Gen3を4レーン、SATA兼用のGen2.1を3レーン持っていて、M.2 SSDはそれぞれGen3 x1接続となっています。
転送速度は片方向8GT/s(0.9846GB/s≒1,000MB/s)なので、1,000~1,500MB/s程度の安価なM.2 SSDで十分です。
まぁ、そもそも出口が2.5GbE(実測300MB/sくらいが限界)なので、それでもオーバースペックだったりしますが。
さらに無印のRK3588を前提としているので、デュアルHDMI+HDMI-Inとか、USB3.0が2ポートあったりとか、インターフェース面も充実しています。
全部埋めて満た図。壮観ですね。
これで手のひらからはみ出すくらいの大きさという。160×116mmは、CDケース(142×124mm)をちょっとスリムにして引き延ばしたくらいのサイズ感です。
ポート類はこんな感じです。
まとめ
「CM3588」の価格は以下の通り。
・CMのみ(4GB/0GB):95ドル(約1.4万円)
・CMのみ(8GB/64GB):110ドル(約1.6万円)
・CMのみ(16GB/64GB):125ドル(約1.8万円)
・キャリアボード:35ドル
つまり、16GB/64GBモデルとキャリアボードのセットでも160ドル(約2.4万円)しかかかりません。
オールM.2 SSDなNASと言えばASUSTOR「FLASHSTOR」シリーズがありますが、Celeron N5105/4GBメモリ/6ベイの「FS6706T」で7万円以上もします。
構成も全然違うので一概に比較はできないものの、単にオールM.2 SSD NASが欲しいのであれば「CM3588」のコスパは素晴らしいものと言えるでしょう。
HDMI-Inを使ってパススルー表示しながら、ゲームなどを実況しつつ録画なんてこともできそうですね。
というか、ここまでのものが出てくるとは想像もしていませんでした。
ケースこそないもののゼロスピンドルNASも構築できるわけですし、SBC界隈がざわつくことは間違いなさそうです。
しかしまた、年末に特大のネタをぶっこんで来たなぁ…
関連リンク
製品ページ:FriendlyELEC
CM3588:FriendlyELEC wiki
CM3588 NAS Kit:FriendlyELEC wiki
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