2021年6月24日、QNAPはトライバンドメッシュWi-Fi SD-WANルーターの「QMiro-201W」および「QMiroPlus-201W」を発表いたしました。
「QMiroPlus-201W」は「QMiro-201W」に2ベイの2.5インチドライブNAS機能を追加したもので、記事のメインで紹介する製品となります。
スペック
QMiroPlus-201W
CPU | ルーター:Qualcomm IPQ4019 NAS:Celeron J4125 |
---|---|
メモリ | ルーター:512MB DDR3 NAS:4GB DDR4 |
ストレージ | ルーター:4GB eMMC NAS:4GB eMMC |
インターフェース | USB 3.0×2 2.5GbE×1 1GbE×4 |
wi-fi | 802.11ac+BT5.0 867+867+400 トライバンド |
サイズ | 105×183.5×143.5mm |
重さ | 1.44kg |
QMiro-201W
CPU | Qualcomm IPQ4019 |
---|---|
メモリ | 512MB DDR3 |
ストレージ | 4GB eMMC |
インターフェース | USB 3.0×1 1GbE×2 |
wi-fi | 802.11ac+BT5.0 867+867+400 トライバンド |
サイズ | 100×68×175.5mm |
重さ | 0.44kg |
特徴
「QMiroPlus-201W」はWi-fiルーター付きNASではなく、NAS機能付きWi-fiルーターです(どっちが主かという話ですね)。
で、Wi-fiルーターというのも一つの側面であって、本質はメッシュWi-fi、メッシュVPN(SD-WAN)を構築するデバイスでもあります。
SDNを簡単に説明すると、単一のソフトウェアによって、複数のネットワーク機器を集中的に管理・運用できる技術、となります。
インフラとしてのクラウドサービスにおける、仮想ネットワークなどもSDNのひとつですね。
SD-WANはSDNを発展させ、広域ネットワーク(Wide Area Network)に適用したもので、複数の拠点にあるネットワーク機器を一元的に管理・運用できる技術です。
QNAPではSD-WANの管理をクラウド(Web)ベースとし、IPSec暗号化に対応したメッシュVPN、ネットワークセキュリティなどを包括したQuWANというソリューションを提供しています。会社のQNAP NASをマウントしてローカルドライブのように扱う、なんてことができるようになります。
▲QuWANの管理画面(QuWAN Orchestrator)です。
世界規模になっていますが登録されたルーターがマッピングされ、相互接続の状況が一目で確認できるようになっています。
大仰に感じますが、要は本店にいながら支店のルーターも管理でき、本店の社内ポータルに支店からログインできるというのがQuWANというサービスです。
これをリモートワークに落とし込むと、会社のインフラ担当が設定したものを社員に持って帰ってもらい、家にあるルーターに繋いでもらうことで(アクセスポイントモードでもQuWANに接続できるので、ルーターを入れ替える必要がありません)、社員による操作を最低限に、家庭から社内ネットワークに接続するなんて使い方も考えられます。
というか、それが「QMiro」シリーズの狙っているところではないかと。
なお、SD-WAN機能はルーターに付随するかライセンス制か、単体サービスかに分かれますが、QuWANの場合はルーター付随の機能で料金もかかりません。
さらに単にそれだけではもったいないので、家庭内においては「QMiroPlus-201W」を親、「QMiro-201W」を子(中継器)としたメッシュWi-fi(子は3台まで)を構築するなんて機能も盛り込んでいるわけです。
ちなみにQNAP NASもQuWAN Agentというアプリをインストールすることで、ネットワークに参加することができます(スペック条件あり)。
ハードウェア面
「QMiroPlus-201W」はルーター部分とNAS部分が分けられていて、CPUもそれぞれに用意されています。なかなかに手が込んでいます。
CPU(SoC)
ルーター部分はQualcomm IPQ4019という、Wi-fiシステムに特化したSoCが使われています。
仕様的には4コアARM Corex-A7で、動作周波数は716.8MHz、SoC的に対応しているのが802.11ac(Wi-fi 5)までなので、必然的に「QMiroPlus-201W」はWi-fi 5ルーターとなります。
…意欲的な製品なのでいいですけど、次はなんとかして802.11ax(Wi-fi 6)に対応してほしいですね。
一方でNAS部はCPUにIntel Celeron J4125を搭載しています。
CPUだけ見ると、「TS-x53D」シリーズと同等です。
メモリ・ストレージ
メモリはルーター部が512MB DDR3、NAS部が4GB DDR4です。さすがに増設はできなさそうです。
ルーター部もメモリ512MBとなると、ミドル~ハイクラスのWi-fiルーター並みなので、ここで処理が遅れるということは起こりにくいでしょう。
ストレージはOS用にルーター部・NAS部それぞれに4GB eMMCが確保され、ルーター部にはQuRouter、NAS部にはQTSがOSとして搭載されています。
…デュアルOSが同時に稼働するデバイスとかなかなかに変態的ですね。
Wi-fi
先述したように、「QMiroPlus-201W」はSoC的に802.11ac(Wi-fi 5)までしか対応していません。
その代わり867+867+400Mbpsのトライバンドに対応しています。
802.11ac Wave2には対応しているものの、802.11ac Wave2で定義されたHT160(160MHz幅での通信)には対応しておらず、2ストリーム×80MHz幅なので867Mbpsまでとなっています。
筐体
筐体の正面と背面です。正面はカバーが付いています。全体的にプラスチッキーな外観なのでちょっとチープ感が漂っています。
せめて白か黒かシルバーにすれば家電っぽい感じで溶け込めると思うのですが…
背面はUSB3.0が2ポートに、2.5GbE×1+1GbE×4という構成になっています。2.5GbEはホストポートです。
正面のカバーを外すと、2.5インチ×2ベイが現れます。
内部はL字型に基盤が入っていそうな雰囲気ですが、詰めれば3ベイもできたんじゃないかなぁと。
いっそ、もう少し幅を広げて4ベイにするのもありだと思うので、次は4ベイモデルがあるといいですね。
QMiro-201Wについて
「QMiro-201W」は「QMiroPlus-201W」からNAS機能を取っ払ったものと言えばだいたい合っています。
SoCは同じくQualcomm IPQ4019、メモリは512MB DDR3でストレージは4GB eMMC、Wi-fi仕様も867+867+400Mbpsと、「QMiroPlus-201W」のルーター部と同じとなっています。
インターフェースは簡素化されていて、USBは1ポート、LANポートも1GbE×2となっています。
Wi-fiでの利用がメインって感じですね。
こんなんでもQuRouter OSが動き、QuWANに対応しているので、テレワーク社員が社内ポータルに接続するためのデバイスとして使うことができますし、「QMiroPlus-201W」と組み合わせて家庭内のWi-fiの死角をふさぐ中継器として活用することもできます。
まとめ
「QMiro-201W/QMiroPlus-201W」はすでに販売中で、「QMiro-201W」は21,000円前後、「QMiroPlus-201W」は70,000円前後となっています。
「TS-253D」が約50,000円なので、そこに「QMiro-201W」を加えたくらいの金額ですね。
…「QMiro-201W」と「TS-253D」を買えば、メモリ増設やPCIeスロットも使えるなぁとか思っちゃだめですかね?
QuWANはともかく、NAS機能のあるWi-fiルーターは個人的に欲しいなぁと思うので、是非ともこの路線で802.11axに対応した4ベイモデルを出してほしいところです(ついでにメモリが増設できたりPCIeスロットがあったりするとなお良し)。
…そこまで要求するなら素直にハイクラスのWi-fiルーターと「TS-453D」あたりを買えって話ですけどね。ロマンがあるんですよ。
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