2023年3月8日、SBCメーカーのFriendlyELECはRockchip RK3588Sを搭載したSBC(シングルボードコンピューター)の「NanoPi R6C」を発売しました。
スペック
■ NanoPi R6C | |
CPU | Rockchip RK3588S |
---|---|
メモリ | 4~8GB LPDDR4X-2133 |
ストレージ | 0/32GB eMMC |
インターフェース | USB Type-C(電源)×1 USB 3.0×1 USB 2.0×1 HDMI microSDXC 2.5GbE 有線LAN×1 1GbE 有線LAN×1 オーディオジャック |
wi-fi | 非対応 |
サイズ | 90×62×20mm |
重さ | 53.1g |
特徴
「NanoPi R6C」は型番的に「NanoPi R6S」の姉妹機的な位置づけで、設計も一部共通していますが、方向性は全く別物です。
SoC
「NanoPi R6C」のSoCは、Rockchip RK3588Sです。
おそらく今一番人気のSoCで、ラズパイクローン以外でもXunlong Software「Orange Pi 5」やKhadas「Edge 2」など、多数の搭載SBCが登場しています。
Rockchip RK3588Sは、Sの付かないRK3588の弟分的な立ち位置です。
違いは以下の通り。
RK3588S | RK3588 | |
---|---|---|
CPU | Cortex A76 ×4 Cortex A55 ×4 | |
GPU | Mali-G610 MP4 | |
NPU | 6TOPS | |
メモリ | LPDDR4x/LPDDR4/LPDDR5 最大32GB | |
映像出力 | HDMI 2.1/eDP ×1 DisplayPort ×1 MIPI DSI ×2 | HDMI 2.1/eDP ×2 DisplayPort ×2 MIPI DSI ×2 |
映像入力 | 48MP ISP MIPI CSI 4×2lane DVP | 48MP ISP MIPI CSI 4×2lane DVP HDMI-IN (4K/60Hz) |
ネットワーク | 1GbE ×1 | 1GbE ×2 |
USB | USB3.1 Gen1(OTG) ×1 USB3.1 Gen1(HOST) ×1 USB2.0 (HOST) ×2 | USB3.1 Gen1(OTG) ×2 USB3.1 Gen1(HOST) ×1 USB2.0 (OTG) ×2 |
PCIe | – | PCIe 3.0 x4 |
Combo PIPE | 2ポート | 3ポート |
低速I/O | SPI ×5 I2C ×9 UART/GPIO ×10 12bit ADC CAN bus ×3 | SPI ×5 I2C ×9 UART/GPIO ×10 12bit ADC |
サイズ | 17×17mm | 21.45×21.45mm |
CPU/GPU/NPU構成はRK3588と同じで、インターフェース周りが簡素化された分、パッケージサイズが小型化しています。
そのため、もともと搭載できるインターフェースの限られる、クレカサイズSBCに採用されやすいという側面があります。
CPUは4コア2.4GHz Cortex-A76+4コア1.8GHz Cortex-A55、GPUはMali-G610 MP4、NPUは6.0TOPSとされています。
参考 RK3588S データシート:CNS Software ※PDF
性能についてはレビュー中の「Orange Pi 5」のデータだと、GeekBench5では2600点オーバー。近いのはPentium N6005やCore i3-1115G4です。
旧世代のSBCでよく使われていたRK3399(約700点)比だと、ざっと3.7倍です。
“S”なしRK3588のものでサンプル数は3しかありませんが、PassMarkスコアは6000オーバーなので、Celeron N5095(スコア4000)よりも高性能で、Core i5-8250U(スコア5905)と同等ですね。
同じく”S”なしRK3588では、AnTuTu(v9)では54万点を叩き出しています。これはSnapdragon 855(同51万点)より高く、Snapdragon 865(同66万点)より低い程度です。
参考 GeekBench4 Search (RK3588S)
参考 GeekBench5 Search (RK3588S)
参考 PassMark – Rockchip RK3588
参考 RK3588S データシート:CNS Software ※PDF
メモリとストレージ
「NanoPi R6C」のメモリは4GBまたは8GBのLPDDR4X-2133。
16GBモデルもあればなお良かったのですが、そもそもFriendlyELECではPC的使い方を想定したものは「NanoPC」とシリーズを分けているので、あえて8GBまでなのでしょう。
ストレージは4GBモデルはなし、8GBモデルは32GB eMMCです。
他にSDR104モードに対応したmicroSDと、M.2 SSD(2280サイズ、PCIe2.1 x1接続)が使えます。
PCIe2.1 x1接続は片方向0.5GB/s(≒500MB/s)なので、低速なSSDで十分ですね。
その他
無線LANは非対応。カードスロットもありません。USB Wi-fiは使えます。
有線LANは2.5GbE+1GbEのデュアルLAN。
「NanoPi R6S」ではデュアル2.5GbE+1GbEのトリプルLANでしたが、2.5GbEに割り振っていたPCIeを1レーン分M.2 SSDに割り振った形になります。
電源はUSB PD(Type-C)。5~20Vに対応していますが、消費電力についての記載はありません。
OSはUbuntu 22.04、Debian 10/11、Android 12 TV/Tablet、OpenWrtベースのFriendryWrtなど。
FriendryWrt使用時でもDocker経由でだいたいのアプリは動きます。
外観
インターフェースです。
「R6S」では削除されていたGPIOヘッダが復活しています。
裏側は、90mm幅の基板に2280(22×80mm)のSSDがギリギリ納まっています。
多分これを下回るサイズは出ないんじゃないかな…
M.2 SSD対応SBCとしては、ほぼ同じサイズ(92×62mm)でSの付かないRK3588を搭載して、PCIe Gen3 x4接続を実現したBanana Pi「BPI-M7」とツートップになりそう。
ケースはmicroSDとボタン以外のインターフェースがすべて同じ辺に集まっていて、正面はLEDのみに。置いたときの見た目がすっきりです。
Wi-fi用のホールがありますが、肝心のWi-fiは非搭載なので、代わりにGPIOからの線を引き出すのに使えそうです。
まとめ
「NanoPi R6C」の価格は4GB(no eMMC)モデルが85ドル、8GB(+32GB eMMC)が110ドル。さらにメタルケースが15ドルです。
「NanoPi R6S」(8GB+32GB)が119ドルなので、実はちょっとだけ安かったり。
素の状態だとbluetooth接続がないのはネックですが、クレカサイズでM.2 SSDを搭載出来るのは汎用性が高そうですし、それでいて安価なRK3588S搭載SBCの相場程度の価格で手に取りやすいのはいいですね。
用途は定まっていないけれどとりあえずRK3588Sを試してみたいという人にも良さそうです。
関連リンク
製品ページ:FriendlyELEC
NanoPi R6C:Friendly wiki
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